ご予約はこちら
045-932-5151
2023年8月19日

消化器科

消化器疾患』吐出、嘔吐や下痢、食欲不振や体重減少などが認められたら消化器疾患を考えます。消化器とは、口、のど、食道、胃、小腸(十二指腸・空腸・回腸)、大腸、肛門まで続く消化管と、これらにくっついて消化液を分泌する肝臓、胆嚢(たんのう)、膵臓(すいぞう)からなります。

食べたものを消化するには様々な臓器がかかわっています。1つの臓器にのみ病気が起こることもあれば複数の臓器に異常が認められる事もあり、しっかりとした診断には入念な検査が必要になります。その一方で一般的な対症療法(吐き気止めや整腸剤)で良くなってしまう場合もあります。下痢や吐き気などで来院された場合には『消化器症状以外に症状がないか』『黄疸や脱水をはじめとした身体検査所見異常がないか』を入念にしらべることが重要です。

 

消化器疾患に対する検査

消化器症状に対しては様々な検査を使用しアプローチを行っていきます。

 

◇便検査

 

消化管内寄生虫や腸内の細菌バランスを顕微鏡で確認をします。肉眼で見つけれない感染症などに関しては専用のキット(パルボウィルスやジステンパー、ジアルジア)を使用し検査を行います。感染症の可能性があり院内の簡易検査キットでは原因がわからない場合、IDEXX社の下痢パネル(PCR)を外注検査することもあります。

 

 

◇血液検査

 

血球計算(Complete Blood Cell)では貧血や白血球の異常を、血液化学検査(では臓器の状態を直接的に反映している酵素(Glu、ALB、肝酵素、LIPA、脂質など)や炎症マーカー(CRP、SAA)を測定していきます。また、消化器障害を生じるような内分泌疾患の検査や肝機能の検査(COR、T4、TBA)も院内で迅速に測定することが可能です。

 

 

 

◇画像診断(腹部・胸部レントゲン検査、腹部エコー検査)

 

レントゲン検査では食道拡張症や胃拡張胃捻転症候群を検出する事が可能です。また造影検査をおこなう事により正確に機械的・機械的イレウスの診断に役立てることができます。腹部エコー検査では腹腔内の臓器の評価が可能です。例えば胆泥症や胆嚢粘液嚢腫などは超音波検査で診断できる代表的な疾患です。また腹腔内の腫瘤や腸閉塞、急性膵炎、最近では異物などの検出感度も高く、現在当院では日常行う検査の中で一番使用頻度の多い検査となっています。

 

DRパネル
エコー検査機器
エコー検査で確認された消化管腫瘤

 

◇上部及び下部消化管内視鏡検査

 

消化器障害の原因が上部消化管(胃・小腸)や下部消化管(大腸)である場合で、上記の検査では原因が確定できない場合、また特定の対症療法に治療反応を示さない場合には麻酔下で内視鏡検査を行います。内視鏡検査では消化管内腔から粘膜の肉眼初見を確認し、内視鏡下生検法により病理検査を行う事でその病変を構成する組織の状態を把握する事ができます。

 

 

 

 内視鏡検査は人の方では健康診断でも行われる検査になりますが、動物医療では麻酔が必須になるため少しハードルが高くなるイメージがあります。しかし比較的安全性が高く、診断精度も高い検査になるため必要以上に内視鏡検査を恐れる必要はありません。一般状態のいい子ではその日に帰ることが可能です。

*内視鏡で釣り針の摘出!?

*内視鏡で種を摘出!?

 

慢性腸症~治らない消化器症状の原因を探る~

 

『3週間以上の慢性的な消化器症状を呈し、かつスクリーニング検査において原因の特定に至らない消化器疾患』を慢性腸症といいます。いわゆる一般的な難治性の消化器疾患のことを指しています。当院では消化器疾患に対して体系的な診断を心かけており、この慢性腸症の診断にも力を入れております。慢性的な下痢や嘔吐、体重減少などでお困りの方は気軽にご相談ください。慢性腸症に関しては他頁にて紹介しておりますのでそちらもご覧ください。

その他の記事

  • 高カルシウム血症

    普段血中のカルシウム濃度は厳密に調整されていますが、恒常性が破綻してしまうと高カルシウム血症が生じてしまいます。軽度の高カルシウム血症の場合は無症状のことが多く、偶発的に見…

    1年前
  • 泌尿器科

     泌尿器とは泌尿器とは、腎臓、尿管、膀胱、尿道などからなる器官の総称で、血液をろ過して尿を作り、体内の水分や塩分のバランスを調整する働きをします。  高齢になると腎臓…

    2年前
  • 犬の外傷性股関節脱臼

    犬の起こりやすい外科疾患の中に股関節脱臼というものがあります。股関節脱臼は全ての外傷性脱臼の中でも最も発生が多く、全ての年齢に起こり、犬種や性差に関係なく発生します。主に…

    10か月前
  • 犬の瞬膜腺脱出(チェリーアイ)

    瞬膜腺とは内眼角側にあるT字型の軟骨を支えに存在しています。この瞬膜は眼球の物理的な保護、眼脂の除去、涙を眼球に広げてくれるなどの働きがあります。この瞬膜の裏側に存在するの…

    3か月前
  • 尿管結石摘出術

      尿管結石は文字通り腎臓と膀胱をつなぐ『尿管』に結石が詰まってしまい、二次的に腎臓に損傷が生じる疾患です。片方の尿管に閉塞しただけでは主だった症状は認められませんが…

    2年前
  • フィラリア予防

    毎年春になるとフィラリア予防という言葉を耳にすると思います。なんとなくわんちゃんに害がありそうだから、健康診断のついでにやっておこうかな?本当にフィラリアの検査って必要なの…

    2年前
  • 内視鏡で誤食した釣り針を摘出

    釣り針を食べてしまったとの事で来院した7カ月のワンちゃん。 X線検査を実施すると胃の中に釣り針が・・・。 釣り針のような尖ったものは…

    3年前
  • 食道バルーン拡張術にて治療した食道狭窄の猫の1例

    食道狭窄とは食道内腔が異常に狭くなることで嚥下障害が生じる病態のことを言います。 主な原因としては、薬物や化学物質による化学的な粘膜傷害、過度な嘔吐や胃酸の逆流(逆流…

    6か月前
  • 胆嚢破裂を起こした胆嚢粘液嚢腫の犬

    胆嚢粘液嚢腫は犬の代表的な緊急疾患の一つです。以前にも当院で胆嚢摘出術は数例行っておりますが、今回は胆嚢が合破裂し胆嚢内要物が腹腔内に播種した症例をご報告いたします。 …

    2年前
  • 発作重責・脳炎

    犬によく見られる特発性髄膜脳脊髄炎の一種で、多因性の疾患であり、明確な原因は不明です。臨床症状は大脳病変の部位によって異なり、発作や虚弱、旋回運動、視覚障害などを呈し、最終…

    6年前