- ホーム
- 症例
- 消化器の病気/総合診療科
- 消化管穿孔
消化管穿孔
消化管穿孔は外傷、異物、腫瘍など様々理由で生じます。今回は消化管の穿孔により細菌性腹膜炎を生じた猫を紹介いたします。
雑種猫 2歳9カ月 去勢雄
数日前から食欲がなくお腹が膨れているとの事で来院されました。もともと異物癖があり数日前におもちゃを飲み込んだかもしれないとの事でした。身体検査では発熱、腹部膨満、軽度脱水が認められました。血液検査では白血球の上昇(43000/dl)低アルブミン血症(2.0g/dl)、SAAの高値(149.8µ/dl)が認められ、腹部エコー検査では下図のように消化管周囲をはじめ腹腔内に多量の腹水が認められました。


貯留液検査は変性漏出液であり、腹水中のGluの低値およびグラム陰性桿菌と好中球が認められたため消化管穿孔に伴う細菌性腹膜炎と診断しました。穿孔部位と異物を特定するためにイオヘキソールによる消化管造影検査も併せて実施しましたが穿孔部位の特定には至らず、異物も確認できませんでした。
全身状態の低下は認められましたが、敗血症性ショックまでには至っていなかったため全身麻酔下にて開腹手術を行いました。開腹したところまず目に入ってきたのは大量の腹水と膿でした。


周囲の組織や腹膜に癒着している部位を丁寧にはがしていきながら消化管を体腔外に牽引しまし、穿孔部を探索しました。明らかな穿孔部位は確認できませんでしたがびらんになっている部位を確認したためリークチェック後に消化管の端々吻合を行いました。



切除後に消化管の端々吻合を行い再度リークチェックを行いました。大量の腹水をすべて抜去し、腹腔内に貯留した膿を可能な限り洗浄し最後にアクティブドレーンを設置し閉腹しました。



この症例は異物を最後まで確認することができませんでした。切除した消化管の病理検査結果では混合細胞性の炎症所見であり、最後まで原因の特定には至りませんでした。
現在術後3か月後を経過しており一般状態も良好で再発もありません。おそらく異物により一時的に消化管穿孔が生じ、漏出した腸液への炎症反応によって伴い大量の腹水が生じたものと考えておりますが、原因の特定が出来ておりませんので今後も経過観察が必要です。
今回はまれなケースですが、消化管穿孔は高齢の猫ちゃんでは腫瘍の破裂で良く遭遇する疾患です。
食欲が落ちてきたが体重が増えてきたなど、気になる症状がある場合は早めの受診をお勧めいたします。
その他の記事
-
犬の甲状腺機能低下症について | 元気がないや皮膚症状は甲状腺機能低下症の初期症状かも? ~症状編~
こちらの記事では甲状腺機能低下症の症例で認められやすい症状について解説していきます。 甲状腺ホルモンは全身的に作用するため、症状も様々なものが認められます。 …
1か月前 -
紐状異物
紐状異物は危険な異物の一つで、特に猫に多く見られます。 消化管は食べ物を消化・吸収するために蠕動運動をしています。紐によって手繰り寄せられた消化管は、蠕動運動によって…
3年前
-
気管支鏡を実施した猫の症例
呼吸器疾患に対する検査にはX線検査やCT検査等の画像診断に加えて、血液検査(動脈血液ガス分析)や気管支鏡検査、肺生検(病理検査)などが挙げられます。消化管や肝臓などの他の…
3年前 -
犬の甲状腺機能低下症について | 元気がないや皮膚症状は甲状腺機能低下症の初期症状かも? ~治療編~
こちらの記事では甲状腺機能低下症の治療について解説していきます。 正しく適切なホルモン補充療法とモニタリングが行われていれば予後良好なことが多いです。 甲状腺…
4週間前 -
当院での避妊手術について、詳しい手術方法を解説します
皆さんが飼われているペットさんは避妊手術・去勢手術はされましたか?今回は当院での避妊手術について紹介したいと思います。 当院での避妊手術は「子宮卵巣摘出術」を採用…
3年前 -
整形外科
整形疾患というと骨折が思い浮かぶと思いますが、その他にもワンちゃんネコちゃんで起こりやすい整形疾患があります。このページでは代表的な整形疾患に関してご紹介していきます。 …
2年前 -
消化器科
『消化器疾患』吐出、嘔吐や下痢、食欲不振や体重減少などが認められたら消化器疾患を考えます。消化器とは、口、のど、食道、胃、小腸(十二指腸・空腸・回腸)、大腸、肛門まで続く消…
2年前 -
犬アトピー性皮膚炎|病態について
アトピー性皮膚炎とは、 「遺伝的素因を有した、痒みを伴うT細胞(炎症細胞の一種)を主体とした炎症性皮膚疾患」 と定義されています。 「遺伝的素因」を有して…
1年前 -
先天性疾患 心膜横隔膜ヘルニア整復
腹膜心膜横隔膜ヘルニア(Peritoneopericardial Diaphragmatic Hernia;PPDH)は、「心膜横隔膜ヘルニア」とも呼ばれる、先天的に発生す…
4か月前 -
犬の弁膜症:僧帽弁閉鎖不全症(MMVD)
犬の弁膜症:僧帽弁閉鎖不全症(MMVD) 僧帽弁閉鎖不全症(以下 MMVD)は犬の心臓病の代表的な疾患です。犬の心臓の構造は人と類似しており、2心房2心室で…
2年前
