ご予約はこちら
受診ご希望、獣医師の方 045-932-5151
企業、法人の方 090-6770-5244
2026年10月6日

犬の急性膵炎について解説 | 実は重症化すると命に関わる可能性のある恐ろしい病気です

”急にお腹を痛がりだした”、”ぐったりしてなにもご飯をたべない”などの症状が見られることはありませんか?このような症状が見られる場合は急性膵炎の可能性があります。

急性膵炎は重症化すると命に関わる可能性のある、恐ろしい病気の一つになります。

今回はそんな犬の急性膵炎について解説していきます。

📌目次

 

犬の急性膵炎とは?

膵炎とは名前の通り膵臓に炎症が生じる病気になります。はっきりとした原因は判明していませんが、何らかの原因によって膵臓内に存在する消化酵素が働きすぎてしまうことによって、膵臓や周りの臓器に強い炎症を引き起こすとされています。

よく見られる症状とは?

急性膵炎では、以下のような症状がみられます。

・嘔吐:何度も繰り返して吐くことがあります

・下痢:消化不良により軟便~水様便になります

・食欲不振/元気消失:ぐったりして動かなくなることがあります

・腹痛:おなかを触ると嫌がる。背中をまるめて祈りのポーズをするのが特徴です

・発熱:炎症により体温が上昇することがあります

・脱水:嘔吐や食欲不振により進行します

重症になると、

・ショック:ぐったりして反応が悪くなります

・呼吸促拍

急性膵炎の原因とは?

急性膵炎は「はっきりした原因がわからない」ことも多いですが、以下のような要因が関与すると考えられています。

・脂肪分の多い食事:人の食べ物や脂っこいフードがきっかけになることがあります

・誤食(盗み食い):急に大量に食べてしまうことで発症することがあります

・肥満:膵炎のリスクを高める要因のひとつです

・高脂血症:血液中の脂質が高い状態は膵炎と関連があります

・基礎疾患:糖尿病、クッシング症候群、甲状腺機能低下症などが関与することがあります

・薬剤:一部の薬剤が誘因になることがあります

ただし、実際の臨床では明確な原因が特定できないケースも多いのが特徴です。

検査および診断について

急性膵炎が疑われる場合は、①血液検査、②超音波検査を用いて診断を行います。

①血液検査

血液検査では主にリパーゼという数値を見ます。リパーゼとは膵臓から分泌される消化酵素で、主に中性脂肪を分解します。急性膵炎になると膵臓に障害が起こり、リパーゼが漏れ出て血中濃度が上昇します。また、CRP(C反応性タンパク)の上昇や、CBC(血球計算)では白血球の上昇がみられることもあります。

②超音波検査

急性膵炎の診断には超音波検査が必須と言っても過言ではありません。急性膵炎の場合、膵臓周囲が高エコー(白い)に見え、膵臓が浮き上がって見えるのが特徴です。この他にも、重症度によっては膵管が拡張していたり、腹水が見られたりすることがあります。

また、確定診断には膵臓の生検が有用ですが、侵襲性の高さから一般的には行われないことが多いです。

治療法について

膵炎の治療は、主に点滴・消炎・痛みや吐き気の管理がメインになります。

①輸液療法

嘔吐や下痢、炎症に伴う全身の循環血液量を改善するために行います。

②鎮痛

急性膵炎は激しい疼痛を引き起こすことが多いため、鎮痛剤により痛みの軽減を行います。

③制吐

制吐剤を用いて吐き気を抑えます。制吐剤の使用は、体液喪失や食欲改善、胃や食道粘膜保護などさまざまな観点から推奨されています。

④抗炎症

急性膵炎の炎症をおさえるために、抗炎症治療を行います。

ブレンダZ

ブレンダZはフザプラジブナトリウム水和物を有効成分とする注射剤です。有効成分が白血球による炎症反応を抑制し、膵炎の症状を緩和します。

ステロイド

初期治療に対して不十分、かつ腸炎や胆管炎などが合併しているときに使用する場合があります。

⑤栄養管理

過去には絶食絶水が推奨されていましたが、現在は早期から低脂肪食をあたえることが推奨されています。早期から絶食絶水することにより、腸粘膜の萎縮や腸管内からのバクテリアトランスロケーション(腸管内の細菌が粘膜バリアを通過して体内に移行)による感染症の合併症発症率を上昇させる可能性があるからと報告されています。

まとめ

特に急性膵炎は緊急度が高く、治療を行わなければ数日で重症化してしまい、最悪の場合命を落としてしまうこともあります。しかし、重症化する前に適切に治療を開始することで完治する可能性が高くなります。そのため、急性膵炎は早期発見・早期治療が重要となります。

※他の消化器疾患について⇨こちらから

Q&A

Q. どのような症状が見られますか?

A. よく見られる症状としては、嘔吐下痢、食欲不振、腹部痛などの症状が認められます。

 

Q. 原因は何ですか?

A. 脂肪分の多い食事の摂取、肥満や高脂血症などが原因になる場合があります。

 

Q. どのような治療を行いますか?

A. 点滴や消炎・消化器症状に対する治療、栄養療法を行います。

 

Q. 治療期間はどのくらいかかりますか?

A. 重症度によって異なりますが、3日から1週間程度はかかりる場合が多いです。

 

Q. 予防法はありますか?

A. 食事管理が重要になります。脂肪分の多い食事や、人のご飯などは膵炎になる恐れがあるため、適切な食事管理が大事です。

その他の記事

  • 猫の会陰尿道造瘻術

     尿石症(腎結石や尿管結石、膀胱結石など)は若い猫ちゃんでも起こる一般的な病気です。猫ちゃんにできやすい結石はストルバイト結石とシュウ酸カルシウムの2種類です。   …

    3年前
  • うっ血性心不全/心原性肺水腫(犬)

      心源性肺水腫とは、僧帽弁閉鎖不全症や肥大型心筋症などの心臓病によって心臓内の血液の鬱滞が悪化する事により、肺に血液中の水が押し出され呼吸困難を生じる二次的な病態で…

    7年前
  • リンパ節生検を実施した犬の小細胞性リンパ腫/慢性リンパ球性白血病(CLL)の症例

     慢性リンパ球性白血病(CLL)は腫瘍化したリンパ系細胞が分化能を有しているために成熟リンパ球が増加する疾患で、腫瘍性病変の原発部位が骨髄である場合は慢性リンパ性白…

    2年前
  • 副腎腫瘍

    副腎腫瘍にはいくつか分類があり、その由来として副腎皮質由来か副腎髄質由来かで分けられ、ホルモンを実際に産生・分泌するかどうかで機能性のものと非機能性のものに分けられます。副…

    7年前
  • 肥満細胞腫

    肥満細胞腫は、犬の皮膚腫瘍のうち20%前後を占めるため、犬の腫瘍では遭遇することの多い疾患にあたります。主にしこりの付近のリンパ節、続いて肝臓、脾臓へ転移することも多いため…

    4年前
  • 消化管穿孔

    消化管穿孔は外傷、異物、腫瘍など様々理由で生じます。今回は消化管の穿孔により細菌性腹膜炎を生じた猫を紹介いたします。 雑種猫 2歳9カ月 去勢雄 数日前から食欲…

    3年前
  • 全耳道切除・鼓室法切開

    慢性外耳炎・中耳炎  慢性外耳炎は、日常の診療でよく遭遇する疾患です。この疾患はどの犬種にも生じますが、特にアメリカン・コッカー・スパニエルやシーズーなど原発性脂漏症…

    4年前
  • 犬の甲状腺機能低下症について | 元気がないや皮膚症状は甲状腺機能低下症の初期症状かも? ~治療編~

    こちらの記事では甲状腺機能低下症の治療について解説していきます。 正しく適切なホルモン補充療法とモニタリングが行われていれば予後良好なことが多いです。 甲状腺…

    9か月前
  • 犬の外傷性股関節脱臼

    犬の起こりやすい外科疾患の中に股関節脱臼というものがあります。股関節脱臼は全ての外傷性脱臼の中でも最も発生が多く、全ての年齢に起こり、犬種や性差に関係なく発生します。主に…

    2年前
  • 犬の甲状腺機能低下症について | 元気がないや皮膚症状は甲状腺機能低下症の初期症状かも? ~症状編~

    こちらの記事では甲状腺機能低下症の症例で認められやすい症状について解説していきます。 甲状腺ホルモンは全身的に作用するため、症状も様々なものが認められます。 …

    10か月前