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猫の難病、猫伝染性腹膜炎(FIP)について解説
猫伝染性腹膜炎(FIP)は、猫、特に子猫にとって命に関わる程の恐ろしい病気になります。猫伝染性腹膜炎はかつては”治らない病気”とされ、一度発症すると有効な治療法がなく、ほとんどの猫が命を落としていました。しかし、近年では獣医療の進歩とともに有効な治療薬が開発され、現在では長期的な寛解を目指せるようになっています。
今回はそんな猫伝染性腹膜炎(FIP)について解説していきます。

📌目次

猫伝染性腹膜炎(FIP)とは?
猫伝染性腹膜炎(FIP:Feline Infectious Peritonitis)は、猫コロナウイルス(FCoV:Feline Coronavirus)感染に伴って発症する疾患です。この猫コロナウイルスは特に多頭飼育環境で、高い感染率を示しますが、通常の感染では軽度の下痢や症状がない場合がほとんどです。しかし、この猫コロナウイルスが何らかの原因により、FIPを発症する型へと変異することで、FIPが発症されると考えられています。
近年では、獣医療の発展とともに様々な治療薬が開発されています、。そのため、以前は”不治の病”とされていましたが、長期予後を期待できる疾患へと変化してきています。

よく見られる症状について
主な症状として、元気消失、食欲不振、体重減少、抗菌薬に反応しない発熱、黄疸などがみられます。また、FIPの種類に応じて以下の症状が認められます。
①ウェット型:お腹や胸の中に液体がたまるタイプ
お腹や胸がふくらむ(腹水、胸水がたまる)、呼吸が早いor苦しそう
②ドライ型:液体はたまらず、臓器や神経に肉芽腫ができるタイプ
神経症状(ふらつき、発作、麻痺、眼振など)、眼の症状(白濁する、視力が低下するなど)、嘔吐、下痢など


猫伝染性腹膜炎(FIP)の原因とは?
FIP(猫伝染性腹膜炎)は多くの猫が保有しているFCoV(猫コロナウイルス)が、FCoVに感染した猫の体内で変異することによって発症する病気です。FCoVに感染しても、多くの猫は無症状または軽い消化器症状のみで経過します。しかし、一部の猫ではウイルスが体内で性質を変え、免疫細胞の中で増殖するようになります。その結果、全身に強い炎症が起こり、FIPを発症します。
発症にはウイルス変異だけでなく、年齢(FIP発症猫の60%前後が2歳未満)、遺伝的要因、ストレス、免疫状態なども関連すると言われています。

検査および診断について
先述のような症状が見られFIPを疑う場合は、血液検査、画像検査を行って診断を行います。
血液検査
①血球計算検査…非再生性貧血、好中球(白血球の一種)の増多or減少、リンパ球減少
②血液化学検査…高グロブリン血症、肝酵素上昇、高窒素血症

画像検査
画像検査では、腎臓の腫大やリムサインといった特徴的な所見や、腹腔内リンパ節の腫大、腹水・胸水が認められることがあります。


腹水や胸水が認められた場合、これを採取し検査することも診断の手助けになります。

感染チェック
①便PCR…FIPウイルス、つまりコロナウイルスは便中に排出されるため、便検査にてコロナウイルスが陽性であれば、他の検査との総合評価でFIPを疑います。
②リンパ節の針生検…腫大している腹腔内リンパ節の針生検を行い、ここにコロナウイルスの出現があればほぼ間違いなくFIPと言えます。しかし侵襲性が高く高い技術が必要なため、これ以外の検査で診断を行うことも多いです。

治療法について
FIPは治療できる可能性のある病気になってきています
猫伝染性腹膜炎(FIP)は、以前は致死率が非常に高い病気と考えられていました。
しかし近年では、抗ウイルス薬による治療成績が大きく向上し、多くの猫で寛解(症状が落ち着いた状態)が期待できるようになっています。
現在は、適切な診断と治療を早期に開始できた場合、70〜90%前後の猫で良好な治療反応が得られるという報告もあります。
ただし、神経型や重症例では治療反応が低下することもあります。

<FIPの治療>
抗ウイルス薬による治療
現在のFIP治療では、主に「GS-441524」と呼ばれる抗ウイルス薬が中心となります。
GS-441524は、FIPウイルス(猫コロナウイルス変異株)の増殖を抑える薬で、現在のFIP治療において非常に重要な薬剤です。
近年では、
などが使用されています。
海外ではモルヌピラビルが使用されることもありますが、一般的にはGS系薬剤が第一選択となることが多いです。


<治療期間>
一般的な治療期間は 84日間(12週間) が基本とされています。
治療開始後、
- 数日〜1週間程度で食欲や元気が改善
- 2〜4週間で血液検査の改善
- 数か月かけて炎症マーカーや蛋白異常が改善
していくケースが多くみられます。
ただし、
- 神経型
- 眼型
- 重症例
では、より長期間の治療が必要になることがあります。

<投薬方法>
薬剤は猫の状態に応じて、
- 経口投与(飲み薬)
- 皮下注射
- 静脈投与
などを選択します。
近年は経口薬で治療されるケースも増えています。
- 重度の消化器症状
- 神経症状
- 重篤な全身状態
がある場合には、注射薬から開始することもあります。

<治療中に行う検査>
治療中は定期的に血液検査を行い、治療効果や副作用を確認します。
確認する主な項目は、
- 貧血の有無
- 白血球数
- 肝酵素
- 黄疸
- 総蛋白
- グロブリン値
- A/G比(アルブミン/グロブリン比)
などです。
特にFIPではA/G比の改善が経過判断の参考になります。
必要に応じて、
- 超音波検査
- レントゲン検査
- 胸水・腹水検査
を行うこともあります。

<支持療法について>
FIPでは抗ウイルス治療に加えて、症状を和らげるための支持療法も重要です。
状態に応じて、
- 点滴
- 栄養管理
- 制吐剤
- 食欲増進剤
- 貧血への対応
- 胸水・腹水の管理
などを併用します。
神経型FIPでは、けいれんや歩行異常に対する治療が必要になることもあります。

FIPの予後
FIPは依然として重い病気ですが、治療成績は以前と比較して大きく改善しています。
特に、
- 早期診断
- 早期治療
- 適切な投薬継続
ができた場合には、長期生存が期待できるケースも増えています。
一方で、
- 重度の神経症状
- 重度の黄疸
- 著しい低体重
- 重度貧血
などを伴う症例では、治療反応が乏しい場合もあります。
また、一度改善しても再発するケースがあるため、治療終了後もしばらくは経過観察が重要です。

まとめ
かつてFIPは根治の見込めない致死的な疾患とされ、治療に難航することが多い病気でした。しかし、上記にも述べたように獣医療の発展により、様々な治療薬が開発されたため、根治の見込めない致死的なものから、治る病気へと変化してきています。
FIPを疑う様な症状が見られた場合には、お近くの動物病院へご相談下さい。
他の症例記事について⇨こちら

Q&A
Q. 猫伝染性腹膜炎(FIP)の原因とは?
A. FIP(猫伝染性腹膜炎)は多くの猫が保有しているFCoV(猫コロナウイルス)が、FCoVに感染した猫の体内で変異することによって発症する病気です。FCoVに感染しても、多くの猫は無症状または軽い消化器症状のみで経過します。しかし、一部の猫ではウイルスが体内で性質を変え、免疫細胞の中で増殖するようになります。その結果、全身に強い炎症が起こり、FIPを発症します。
Q. 猫伝染性腹膜炎(FIP)ではどんな症状が出ますか?
A. 主な症状として、元気消失、食欲不振、体重減少、抗菌薬に反応しない発熱、黄疸などがみられます。また、FIPの種類に応じて他の症状が認められる場合があります。
Q. 猫伝染性腹膜炎(FIP)ではどんな検査をしますか?
A. 血液検査、画像検査、遺伝子検査など様々な検査を組み合わせることで診断します。
Q. 猫伝染性腹膜炎(FIP)ではどんな治療法がありますか?
A. モルヌピラビル、GS製剤、レムデシビルなど抗ウイルス薬を使った治療が実施されています。しかし、薬の種類によって費用が大きく異なるため、使用する薬については獣医師とご相談下さい。
Q. 猫伝染性腹膜炎(FIP)はどれくらい治りますか?
A. 報告では8~9割程の猫が寛解したとされています。早期に気づいて治療を始められるかどうかが治療の鍵となります。
Q. 猫伝染性腹膜炎(FIP)は再発することがありますか?
A. はい、あります。一般的には10%程度は再発する可能性のある病気とされています。
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