- ホーム
- 症例
- 消化器の病気/総合診療科
- 胆嚢摘出術および総胆管ステント設置を実施した犬の1例
胆嚢摘出術および総胆管ステント設置を実施した犬の1例
胆嚢粘液嚢腫とは、胆嚢内に可動性の乏しい胆汁由来の粘液状物質が過剰に貯留した状態です。この粘液状物質が過剰に貯留してしまうと胆嚢拡張を起こしたり、胆汁の流れ出る通り道である”総胆管”という管を閉塞してしまう恐れがあります。総胆管の不完全閉塞や完全閉塞を起こすと、しだいに可視粘膜や皮膚が黄色に変化してくる黄疸というものがでてくる恐れがあります。また、胆嚢拡張が重度になると、胆嚢壁が壊死したりすることにより、胆嚢破裂を起こしたり、そのまま胆汁が漏れることにより胆汁性腹膜炎を引き起こす可能性もあります。

今回は胆嚢粘液嚢腫および総胆管の完全閉塞を起こした症例をご紹介します。
※他の胆嚢粘液嚢腫の記事についてはこちら
症例 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
症例は13歳のミニチュア・ダックスフンド、避妊済みの女の子です。
食欲不振および嘔吐、吐血を主訴に来院しました。
身体検査では、可視粘膜が黄色に変色し黄疸が認められていました。
検査 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥


血液検査では、T-Bilおよび肝数値の上昇が認められました。
超音波検査では、胆嚢内に可動性の乏しい胆泥の貯留および総胆管の拡張を認め、大十二指腸乳頭部には閉塞物と思われる構造物が認められました。
診断 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
検査の結果、胆嚢粘液嚢腫および総胆管完全閉塞と診断しました。
数日は内科治療にて総胆管の拡張度合いや、状態の改善を目指しましたが、入院3日目に胆嚢破裂を認め、状態の改善が乏しいため外科手術を実施することとなりました。

手術 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
外科手術では
・胆嚢摘出術
・総胆管ステント設置
・腹腔内ドレーン設置
を実施しました。
下記では実際の手術写真を載せていきます。
胆嚢および総胆管

胆嚢摘出術

総胆管ステント設置術

摘出後および創部

経過 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
手術後は黄疸も改善し、肝臓の数値もほとんど正常値まで改善してきています。食べムラはありますが、本人も元気にしています。

術後は定期的な検査が必要ではありますが、胆嚢粘液嚢腫では無事に手術が終われば長期的な生存が可能な場合ことも多いです。お家の子がぐったりしている、粘膜や皮膚が黄色の場合は緊急疾患の可能性もありますので、獣医師にすぐご相談下さい。
その他の記事
-
膝蓋骨脱臼
膝蓋骨脱臼とは、子犬に最も多いとされる先天性疾患であり、その割合は7.2%にも及びます。特に小型犬種に多く発生し、大型犬と比較するとその発生リスクは12倍とも言われています…
6年前 -
副腎腫瘍について解説 | よくお水を飲む、尿が薄くて多いは病気の初期症状かも!? ~検査・診断編~
こちらの記事では副腎腫瘍の症例での必要な検査や診断について解説していきます。 副腎腫瘍では診断するためには様々な検査が必要になってきます。 ぜひ最後までお読みい…
3か月前
-
犬アトピー性皮膚炎|治療の2本柱
今回は犬アトピー性皮膚炎の治療方法について詳しくお話していきます。 犬アトピー性皮膚炎の病態についてはこちらで解説しているので合わせてご覧ください。 =====…
11か月前 -
副腎腫瘍について解説 | よくお水を飲む、尿が薄くて多いは病気の初期症状かも!? ~検査・診断編~
こちらの記事では副腎腫瘍の症例での必要な検査や診断について解説していきます。 副腎腫瘍では診断するためには様々な検査が必要になってきます。 ぜひ最後までお読みい…
3か月前 -
犬の甲状腺機能低下症について | 元気がないや皮膚症状は甲状腺機能低下症の初期症状かも? ~治療編~
こちらの記事では甲状腺機能低下症の治療について解説していきます。 正しく適切なホルモン補充療法とモニタリングが行われていれば予後良好なことが多いです。 甲状腺…
2週間前 -
先天性疾患 心膜横隔膜ヘルニア整復
腹膜心膜横隔膜ヘルニア(Peritoneopericardial Diaphragmatic Hernia;PPDH)は、「心膜横隔膜ヘルニア」とも呼ばれる、先天的に発生す…
4か月前 -
最新の論文から考える〜犬の避妊手術、いつやるの?〜
はじめに 犬の避妊手術の適期は、犬種や性別によって大きく異なります。一般的なガイドラインを全ての犬に適用することはできず、個々の犬の健康状態や生活状況を考慮した個別化…
1か月前 -
猫の尿管結石の症例
猫の尿管結石は比較的若齢でも発生する泌尿器系の疾患です。腎臓と膀胱をつなぐ尿管に結石が閉塞することで、腎臓で産生された尿が膀胱に流れず、腎臓に貯まってしまいます(水腎症)…
3年前 -
「たくさん水を飲む」「たくさんおしっこする」は病気のサインかもしれません!
こんにちは!最近は日ごとに気温があがり、夏の暑さが本格的に到来しつつあります。 私たちヒトと同じように、動物も暑くなるとのどが渇いてたくさん水を飲むようになり…
8か月前 -
角膜疾患(潰瘍性角膜炎)
角膜疾患とは、角膜、いわゆる黒目の部分に起こる疾患を指します。角膜疾患では「目を開けずらそう」「涙や目ヤニの量が多い」「まぶしそうにしている」という症状がよく見られます。 …
2年前
