- ホーム
- 症例
- 消化器の病気/総合診療科
- 胆嚢破裂を起こした胆嚢粘液嚢腫の犬
胆嚢破裂を起こした胆嚢粘液嚢腫の犬
胆嚢粘液嚢腫は犬の代表的な緊急疾患の一つです。以前にも当院で胆嚢摘出術は数例行っておりますが、今回は胆嚢が合破裂し胆嚢内要物が腹腔内に播種した症例をご報告いたします。
症例 トイプードル 14歳 去勢雄
食欲不振、血尿および頻尿を主訴に来院、緊急医療センターやHDにて治療したが改善が認められないとの事で当院受診されました。血液検査にて肝酵素の上昇およびCRPの上昇、腹部エコー検査にて、胆嚢周囲の高エコーおよび胆嚢壁の不整など胆嚢粘液嚢腫に合致する所見が得られました。同時に膀胱周囲に低エコー性の腫瘤性病変が3つ認められ、血尿や頻尿は当該病変に起因するものと考えられました。


入院下内科治療にて血液検査は改善し傾向自力摂も認められましたが、頻尿血尿は改善が認められませんでした。膀胱カテーテル生検やCT検査を行いましたが特異的な所見が認められなかったため胆嚢摘出術及び試験開腹を行いました。


胆嚢は術前の予想通り破裂しており、横隔膜と肝臓と胃にびまん性癒着し正常な胆嚢の構造が認められませんでした。


そのため胆嚢壁を横隔膜、肝臓、消化管からはがし分節的に切除しました。横隔膜に癒着した胆嚢壁は切除することは不可能た判断し、癒着をはがすにとどめました。ある程度切除したのち残存している胆嚢の粘膜をバイポーラで処理し総胆管を洗浄後アクティブドレーンを設置しました。
次に膀胱頭側を観察すると、超音波検査で確認できた低エコー性の腫瘤はすべて胆嚢内要物が漏れ出したものであり(写真)、そこに炎症が波及し膀胱炎症状が生じていたことが判明しました。


全ての内容物をきれいにし、腹腔内を洗浄したのち情報に従って閉腹し術式完了としました。
術後切除しきれなかった胆嚢粘膜から生じた胆汁をアクティブドレーンで回収しながら、癒着を待ちました。その間に生じる消化器症状を抑制し、設置した食道婁チューブから栄養補給すること3週間。見事に胆嚢破裂から復活してくれました。
今ではトリミングを行えるほどに元気になっております。
胆嚢破裂は生命にかかわる怖い病気です。可能な限り早期発見早期治療が理想的と考えております。皆様も定期的な血液検査だけではなく画像検査も行ってくださると幸いです。
その他の記事
-
新しい「がん」の血液検査:血中ヌクレオソームの測定
獣医療の発展に伴いペットの長寿化は進んでいますが、その中でも死因の上位にあげられるのが悪性腫瘍、いわゆる「がん」です。特にワンちゃんの死因では「がん」が第1位に…
2年前 -
犬と猫の副腎腫瘍について解説 | よくお水を飲む、尿が薄くて多いは病気の初期症状かも!? ~治療編~
こちらの記事では副腎腫瘍の症例での必要な治療について解説していきます。 副腎腫瘍の治療では大きく外科治療と内科治療に大きく分けられます。 それぞれの治療法を解説…
10か月前
-
犬の甲状腺機能低下症について | 元気がないや皮膚症状は甲状腺機能低下症の初期症状かも? ~症状編~
こちらの記事では甲状腺機能低下症の症例で認められやすい症状について解説していきます。 甲状腺ホルモンは全身的に作用するため、症状も様々なものが認められます。 …
8か月前 -
犬の甲状腺機能低下症について | 元気がないや皮膚症状は甲状腺機能低下症の初期症状かも? ~検査および診断編~
こちらの記事では甲状腺機能低下症における検査および診断について解説していきます。 甲状腺機能低下症では、様々な検査が検査が併用される場合があります。 甲状腺機…
8か月前 -
猫の盲腸腺癌
猫の体重減少には様々な原因があります。甲状腺機能亢進症や慢性腎不全、糖尿病や腫瘍などが代表的な疾患です。特に、このような病気は急激に体調に変化をもたらすわけではなく、ゆっく…
4年前 -
犬の甲状腺機能低下症について | 元気がないや皮膚症状は甲状腺機能低下症の初期症状かも? ~治療編~
こちらの記事では甲状腺機能低下症の治療について解説していきます。 正しく適切なホルモン補充療法とモニタリングが行われていれば予後良好なことが多いです。 甲状腺…
8か月前 -
最新の論文から考える〜犬の避妊手術、いつやるの?〜
はじめに 犬の避妊手術の適期は、犬種や性別によって大きく異なります。一般的なガイドラインを全ての犬に適用することはできず、個々の犬の健康状態や生活状況を考慮した個別化…
9か月前 -
犬アトピー性皮膚炎|病態について
アトピー性皮膚炎とは、 「遺伝的素因を有した、痒みを伴うT細胞(炎症細胞の一種)を主体とした炎症性皮膚疾患」 と定義されています。 「遺伝的素因」を有して…
2年前 -
うっ血性心不全/心原性肺水腫(犬)
心源性肺水腫とは、僧帽弁閉鎖不全症や肥大型心筋症などの心臓病によって心臓内の血液の鬱滞が悪化する事により、肺に血液中の水が押し出され呼吸困難を生じる二次的な病態で…
7年前 -
低侵襲手術(内視鏡を用いた膀胱結石の摘出)
膀胱結石は犬、猫ともに発生頻度の多い泌尿器疾患です。体質により再発を繰り返すことが多いですが、手術時に細かな結石を取り残してしまうことによって術後早期に膀胱内に結石が確認…
3年前
