- ホーム
- 症例
- 消化器の病気/総合診療科
- 胆泥症・胆嚢粘液嚢腫
胆泥症・胆嚢粘液嚢腫
胆嚢とは、肝臓で作られた胆汁の貯留を行う臓器で、方形葉と内側右葉に埋まるように位置しています。胆嚢から発生する疾患には胆石、胆泥、胆嚢粘液嚢腫および胆嚢炎などがあります。最近では超音波(エコー)検査が著しく発達し、人医療でも使用されているような精度の機器が導入されるようになり、この胆嚢疾患の診断率は格段に向上しました。胆嚢疾患の多くは基本的には無症状のまま推移していくため早期にエコー検査で診断することが最重要課題となります。閉塞や破裂を生じた重症例では、血色素尿や黄疸、胆汁性腹膜炎などを呈し命に関わる事もあります。
本症例は、胆嚢粘液嚢腫が破裂し腹膜炎を生じていたため胆嚢摘出術を行った1例です。
【症例】
急性の嘔吐、下痢、食欲不振で来院し、血液検査では肝酵素の上昇と高ビリルビン血症が認められました。腹部超音波検査にて胆嚢壁の不整と総胆管の拡張、胆嚢周囲に炎症所見を認めました。


上記エコー検査にて確認された異常です。左側の写真は典型的な胆嚢粘液嚢腫のエコー画像であり胆嚢周囲に炎症所見も確認されます。右の写真は胆嚢のうっ滞により拡張した総胆管です。この症例は〈胆嚢粘液嚢腫による閉塞性黄疸、および腹膜炎の合併〉と診断し、胆嚢切除術を行いました。
以下は実際の手術写真です。開腹し、異常な胆嚢を切除するまでの手術過程を記載しておりますのでご覧ください。






実際に胆嚢粘液嚢腫や重度胆泥症の症例に遭遇する可能性は比較的多く、時にはなくなって運ばれてきたこの死後エコー検査で胆嚢疾患であったことが判明することも少なくありません。手術をすることに関しても、どのタイミングで手術をするのか? まだ明確なエビデンスは存在しませんが、【破裂する前にしっかりとした処置をしてあげる】が正しいことは間違いないように思います。
また、一部 『春の健康診断』 の項目で取り上げさせていただいておりますが、『肝酵素上昇』は健康診断で比較的多く見られる異常です。健診で肝酵素が上昇しているわんちゃん、7歳を過ぎていて今後の健康が気になる飼い主様!目に見えないものを可視化するという意味で、健康診断に腹部エコー検査を追加してみてはいかがでしょうか?
その他の記事
-
”麻酔前検査”をお勧めしています
手術をするにあたって、人の場合と同様に犬ちゃん猫ちゃんにも全身麻酔をかける必要があります。麻酔前検査では、この全身麻酔が安全にかけられるかどうかを評価するための検査となり…
2年前 -
犬・猫の避妊・去勢手術におけるメリット・デメリット
新しい家族を迎えた時、避妊・去勢手術の実施を考える方は多いかと思います。 みんな手術をしているから家の子もやっておこうといった考えではなく、大切な家族のために手術には…
2年前
-
肝生検
健康診断で『肝臓の数値が高いですね』と言われたことや過去に『黄疸があり大変厳しい病気です』と動物病院で診断されたことはありませんか? 猫ちゃんの肝臓の病気は栄養性、感…
5年前 -
泌尿器科
泌尿器とは泌尿器とは、腎臓、尿管、膀胱、尿道などからなる器官の総称で、血液をろ過して尿を作り、体内の水分や塩分のバランスを調整する働きをします。 高齢になると腎臓…
2年前 -
内視鏡で誤食した釣り針を摘出
釣り針を食べてしまったとの事で来院した7カ月のワンちゃん。 X線検査を実施すると胃の中に釣り針が・・・。 釣り針のような尖ったものは…
3年前 -
先天性門脈体循環シャント
先天性門脈体循環シャントは生まれつき血管に異常のある病気です。なんとなく元気がなかったり、成長が悪かったりと特異的な臨床徴候を出さないこともあり、血液検査をしないとわから…
2年前 -
犬アトピー性皮膚炎|病態について
アトピー性皮膚炎とは、 「遺伝的素因を有した、痒みを伴うT細胞(炎症細胞の一種)を主体とした炎症性皮膚疾患」 と定義されています。 「遺伝的素因」を有して…
12か月前 -
高カルシウム血症
普段血中のカルシウム濃度は厳密に調整されていますが、恒常性が破綻してしまうと高カルシウム血症が生じてしまいます。軽度の高カルシウム血症の場合は無症状のことが多く、偶発的に見…
1年前 -
循環器科
循環器疾患とは血液を全身に循環させる臓器(心臓や血管など)が正常に働かなくなる疾患のことです。代表的な疾患としては、心臓病(弁膜症、心筋症)、高血圧、脳血管障害などがありま…
2年前 -
角膜疾患(潰瘍性角膜炎)
角膜疾患とは、角膜、いわゆる黒目の部分に起こる疾患を指します。角膜疾患では「目を開けずらそう」「涙や目ヤニの量が多い」「まぶしそうにしている」という症状がよく見られます。 …
2年前