ご予約はこちら
045-932-5151
2024年10月22日

犬の外傷性股関節脱臼

犬の起こりやすい外科疾患の中に股関節脱臼というものがあります。股関節脱臼は全ての外傷性脱臼の中でも最も発生が多く全ての年齢に起こり、犬種や性差に関係なく発生します。主に外的な要因(交通事故や落下など)や老化による筋力低下などが原因で起こり、片側性での発生が多いです。

股関節脱臼は特定の犬種(トイ・プードル、ポメラニアン、柴犬など)で発生が多く認められ、上位3犬種だけで半数以上の発生率を占めています。

 

 

また、脱臼してしまう方向は頭背側での発生が最も多いですが、犬種によって脱臼方向の発生率が異なります。

 

 

今回は頭背側方向に股関節脱臼を起こしてしまった犬の症例を紹介いたします。

  


 

症例はトイプードルの女の子です。

痛そうに縮こまって震えているとの主訴で来院されました。

身体検査にて、患肢側の股関節の外旋および肢端の内旋が認められたため、股関節脱臼を疑い、レントゲン検査を実施しました。

この症例では、頭背側方向に股関節が脱臼していました。

 

股関節脱臼が認められた場合の治療法には

1.非観血的整復:用手での整復、ギプス固定など

2.観血的整復:ピン固定、大腿骨頭切除、人工関節など

の大きく2つに分かれます。

観血的整復というのは簡単に行ってしまえば外科的治療(外科手術)のことで、非観血的整復は用手での整復およびバンテージなどを用いた固定を実施するものになります。

非観血的整復では痛みが伴うため鎮静処置が必要になる場合はありますが、観血的整復程の長い麻酔処置は必要でない場合が多く、費用面も手術程はかかりません。しかし、非観血的整復では再発率の高さや固定中の皮膚荒れ長期のギプス生活などの様々なデメリットも存在します。中でも再発率は非常に高く、うまく整復出来たとしてもおよそ60-70%程は再発してしまいます。

 

非観血的整復を実施する場合は

初めての発症であること

受傷後まもないこと(理想は72時間以内)

関節内骨折や股関節形成不全がないこと

                  が重要となってきます。

 

今回の症例では非観血的整復を望まれたので、外固定を実施しました。

 

この症例では1か月程は再脱臼なく過ごせていましたが、その後再発が認められてしまいました。

2-3週間という長い外固定を行ったとしても、このように再発してしまう可能性があるのが非観血的整復の怖いところになります。

 


 

わんちゃんのびっことして骨折や膝蓋骨脱臼などの疾患がメジャーと思われますが、外的要因の中では股関節脱臼が最も多いのです。今回は非観血的整復について述べましたが、何度も再発を繰り返してしまう場合や関節の構造に異常がある場合には観血的整復の実施をお勧めします。

関節疾患の症状緩和にはサプリメントが有効な場合もありますので、サプリメントも併せておすすめいたします。詳しくは獣医師と相談してください。

 

※整形外科についてはこちらからご覧ください。

その他の記事

  • 循環器科

    循環器疾患とは血液を全身に循環させる臓器(心臓や血管など)が正常に働かなくなる疾患のことです。代表的な疾患としては、心臓病(弁膜症、心筋症)、高血圧、脳血管障害などがありま…

    2年前
  • 腹腔鏡下肝生検

     ワンちゃんやネコちゃんでも健康診断で肝臓の数値が高い子を多くみかけます。一般的には症状がなく、元気そうにみえる子がほとんどですが、重病が隠れていることもあります。 …

    1年前
  • 犬アトピー性皮膚炎|治療の2本柱

    今回は犬アトピー性皮膚炎の治療方法について詳しくお話していきます。 犬アトピー性皮膚炎の病態についてはこちらで解説しているので合わせてご覧ください。 =====…

    5か月前
  • 腫瘍科

     獣医療の発展に伴いペットの長寿化が進み、ペットの死因でも悪性腫瘍(ガン)が上位を占めるようになってきました。   犬の平均寿命 14.76 歳、猫の平…

    2年前
  • 呼吸器科

      『当院では、様々な呼吸器疾患に対し質の高い診断や治療が可能にするために血液検査機器、血液ガス検査機器、胸部レントゲン検査、気管支鏡検査、ICU(集中治療室)、およ…

    2年前
  • 2023年度 春の健康診断 結果報告🌸

    こんにちは、しょう動物病院です。 今年もあっという間で、残すところ後2か月となりました。急に冷え込み体調を崩してしまう子が増えたように感じます。 例年通り、今年…

    2年前
  • 「たくさん水を飲む」「たくさんおしっこする」は病気のサインかもしれません!

    こんにちは!最近は日ごとに気温があがり、夏の暑さが本格的に到来しつつあります。 私たちヒトと同じように、動物も暑くなるとのどが渇いてたくさん水を飲むようになり…

    1か月前
  • 肥満細胞腫

    肥満細胞腫は、犬の皮膚腫瘍のうち20%前後を占めるため、犬の腫瘍では遭遇することの多い疾患にあたります。主にしこりの付近のリンパ節、続いて肝臓、脾臓へ転移することも多いため…

    3年前
  • 慢性腸症

      慢性腸症の定義   『対症療法に抵抗性または再発性で3週間以上続く慢性の消化器症状を呈し、一般的な血液検査や画像検査で原因の特定には至らない、原因不明…

    2年前
  • 当院での避妊手術について、詳しい手術方法を解説します

     皆さんが飼われているペットさんは避妊手術・去勢手術はされましたか?今回は当院での避妊手術について紹介したいと思います。  当院での避妊手術は「子宮卵巣摘出術」を採用…

    2年前