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2023年8月7日

整形外科

 整形疾患というと骨折が思い浮かぶと思いますが、その他にもワンちゃんネコちゃんで起こりやすい整形疾患があります。このページでは代表的な整形疾患に関してご紹介していきます。

 

 若いワンちゃんでよくみられる整形疾患として「膝蓋骨脱臼」「大腿骨頭壊死症」などが挙げられます。基本的には整形外科疾患は歩き方の観察や触診でどの部位を痛がったりしているかを特定し、X線検査等で病気を特定することが多いです。

 

 膝蓋骨脱臼は成長期に生じる膝関節の異常で、いわゆる膝のお皿の骨が脱臼することによって膝をうまく伸ばすことが出来なくなる疾患です。膝を曲げて3本足で歩いたりするのが特徴です。強い痛みは伴わないことが多いですが、そのままにしておくと徐々に骨が変形し、将来的に靭帯の断裂や関節炎を起こす可能性が高くなると言われています。根本的な治療は外科手術ですが、適応になるかどうかは臨床徴候と脱臼の程度によります。高齢になってから臨床徴候が出るこの場合は保存療法をすることが多いです。

 

 大腿骨頭壊死症(レッグペルテス)は犬種としてはトイ・プードルで多くみられ股関節を伸ばすと痛がったり、足を伸ばして浮かせたまま歩いたりするのが特徴です。痛みが持続するため手術が必要になる疾患です。壊死した大腿骨頭を切除して痛みを取り除く緩和的な手術が一般的です。手術後は一定期間リハビリが必要になることがありますが、日常生活は問題なく送れるようになることがほとんどです。

 

 ネコちゃんでも股関節に出てくる病気として「大腿骨頭すべり症」という疾患があります。大腿骨近位成長板の閉鎖遅延により、脆弱な部分が離開することで急性、もしくは慢性的な跛行を呈します。若齢なネコちゃんに多く、臨床徴候としては犬のレッグペルテスに似ています。治療は離開した部分をピンやワイヤーで固定する方法と、レッグペルテスと同様に骨頭を切除する方法があります。

左の大腿骨頭の成長板骨折
手術前
手術後(大腿骨頭切除)

 

 高齢のワンちゃんでは「前十字靭帯の断裂」が起きることがあります。膝の関節に付着する靭帯が断裂することにより急に片足を着けなくなり、跛行を呈します。小型犬で体重の軽い子は保存療法で回復することもありますが、一般的には手術が必要な疾患です。触診やX線検査で診断し、手術法として靭帯の代わりに糸をかけるラテラルスーチャーという術式と、脛骨の一部を切ってプレートで固定しなおすTPLO(脛骨高平部水平化骨切り術)という術式が代表的です。大型犬などはTPLOの方が再発が少ない、術後の回復が早いと言われているため、こちらをお勧めしています。なお、TPLOの手術は当院では実施できないため、整形外科の専門病院をご紹介させていただいています。

 

手術前
手術の様子(ラテラルスーチャー)
手術後

 高齢になるとワンちゃん、ネコちゃん共に慢性的な関節炎や変形性関節症などが起こると言われています。この場合は人と同じように関節のサプリメント等を飲ませて緩和していくことと、痛みが強い場合は痛み止めを飲ませてあげることが治療のメインになっていきます。最近では月に1回の注射で

痛みを抑え、かつ副作用の少ない薬も出ていますので、高齢になって動きが鈍くなった、抱こうとすると痛がるなどの臨床徴候でお悩みの方は一度試してみるといいかもしれません。

 

膝蓋骨脱臼

・大腿骨頭壊死症(レッグペルテス)

・大腿骨頭すべり症

・前十字靭帯断裂

椎間板ヘルニア

・変形性関節症

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