- ホーム
- 症例
- 神経科/眼科/整形外科
- 犬の股関節脱臼の外科的整復(大腿骨頭切除)
犬の股関節脱臼の外科的整復(大腿骨頭切除)
犬の起こりやすい外科疾患の中に股関節脱臼というものがあります。股関節脱臼は全ての外傷性脱臼の中でも最も発生が多く、全ての年齢に起こり、犬種や性差に関係なく発生します。主に外的な要因(交通事故や落下など)や老化による筋力低下などが原因で起こり、片側性での発生が多いです。
股関節脱臼は特定の犬種(トイ・プードル、ポメラニアン、柴犬など)で発生が多く認められ、上位3犬種だけで半数以上の発生率を占めています。

今回はこの外傷性股関節脱臼に対して外科的整復を実施した症例をご紹介します。
※股関節脱臼の非観血的整復についてはこちらの記事からご覧ください。
症例
症例は12歳のトイプードルの女の子です。お子さんが乗ってしまい右後肢を挙上しているとの主訴で来院されました。
身体検査にて右後肢の内旋、座骨・腸骨・寛骨のラインがずれ、シット姿勢が認められたので、股関節脱臼を疑いレントゲン検査を実施しました。

この症例では背側方向に脱臼していました。
初発だったため、初めは非観血的整復(バンテージ固定)を実施しましたが、1週間経たずに再脱臼してしまったため、オーナー様と相談し、外科的整復を実施することとなりました。
手術
実際の手術写真とともに手術内容を簡潔に紹介します。






術後

術後のレントゲン写真になります。
股関節脱臼では、脱臼している大腿骨頭が股関節の骨と摩耗することで動く際に痛みが出てきてしまいます。そのため、痛みの原因となっている大腿骨頭を切除することで痛みのもとがなくなるため痛みから解放されます。
術後すぐに負重して歩くことは難しいことが多いですが、リハビリを続けていくと次第に負重が可能になり、通常通り歩けるようになることが多いです。


この症例ではお家でもリハビリを頑張ってくれたため、術後3週間程度である程度負重をかけて歩くことが可能となりました。小型犬では体重が軽いため、このように通常通り歩くことが可能になる子が多いです。
今回は外傷性股関節脱臼の外科的整復についてご紹介しました。
びっこを引く、歩き方や座り方がおかしい場合は整形疾患を患っている可能性があります。
関節疾患などはサプリメントが有用な場合もありますので、サプリメントの併用もお勧めいたします。詳しくは獣医師と相談してください。
※他の整形外科疾患についてはこちらをご覧ください。
その他の記事
-
猫の尿管結石の症例
猫の尿管結石は比較的若齢でも発生する泌尿器系の疾患です。腎臓と膀胱をつなぐ尿管に結石が閉塞することで、腎臓で産生された尿が膀胱に流れず、腎臓に貯まってしまいます(水腎症)…
3年前 -
角膜疾患(潰瘍性角膜炎)
角膜疾患とは、角膜、いわゆる黒目の部分に起こる疾患を指します。角膜疾患では「目を開けずらそう」「涙や目ヤニの量が多い」「まぶしそうにしている」という症状がよく見られます。 …
2年前
-
犬・猫の避妊・去勢手術におけるメリット・デメリット
新しい家族を迎えた時、避妊・去勢手術の実施を考える方は多いかと思います。 みんな手術をしているから家の子もやっておこうといった考えではなく、大切な家族のために手術には…
2年前 -
犬の瞬膜腺脱出(チェリーアイ)とは?
瞬膜腺とは内眼角側にあるT字型の軟骨を支えに存在しています。この瞬膜は眼球の物理的な保護、眼脂の除去、涙を眼球に広げてくれるなどの働きがあり、瞬膜の裏側に存在するのが瞬膜腺…
4か月前 -
発作重責・脳炎
犬によく見られる特発性髄膜脳脊髄炎の一種で、多因性の疾患であり、明確な原因は不明です。臨床症状は大脳病変の部位によって異なり、発作や虚弱、旋回運動、視覚障害などを呈し、最終…
6年前 -
犬の脱毛|加齢によるもの?病気?
わんちゃんも人と同じように、高齢になると毛の色が変化したり薄くなったりします。これは生理的なものですが、中には病的に脱毛が起こってしまうことがあります。 今回は病的な…
5か月前 -
内視鏡で誤食した釣り針を摘出
釣り針を食べてしまったとの事で来院した7カ月のワンちゃん。 X線検査を実施すると胃の中に釣り針が・・・。 釣り針のような尖ったものは…
3年前 -
リンパ節生検を実施した犬の小細胞性リンパ腫/慢性リンパ球性白血病(CLL)の症例
慢性リンパ球性白血病(CLL)は腫瘍化したリンパ系細胞が分化能を有しているために成熟リンパ球が増加する疾患で、腫瘍性病変の原発部位が骨髄である場合は慢性リンパ性白…
12か月前 -
全耳道切除・鼓室法切開
慢性外耳炎・中耳炎 慢性外耳炎は、日常の診療でよく遭遇する疾患です。この疾患はどの犬種にも生じますが、特にアメリカン・コッカー・スパニエルやシーズーなど原発性脂漏症…
3年前 -
新しい「がん」の血液検査:血中ヌクレオソームの測定
獣医療の発展に伴いペットの長寿化は進んでいますが、その中でも死因の上位にあげられるのが悪性腫瘍、いわゆる「がん」です。特にワンちゃんの死因では「がん」が第1位に…
11か月前