犬・猫の混合ワクチン
コロナの影響によって”ワクチン”という言葉をよく耳にするかと思います。わんちゃん、ねこちゃんと一緒にいると、はがきなどによって混合ワクチンのお知らせが届くと思いますが、単味、2種、3種、5種、7種、8種、10種など様々な種類があり、どれを接種してあげたらいいか分からないという方も多いと思います。ここでは、そんな混合ワクチンについて簡単にですがご説明したいと思います。
<ワクチンとは?>
そもそも”ワクチン”とは、感染症の予防を目的としたもので、予防のために必要な獲得免疫を動物に賦活する薬剤(液体)のことを言います。このワクチンには、”コアワクチン”と呼ばれるものと”ノンコアワクチン”と言われる2つのものが存在します。
・コアワクチン:すべてのわんちゃんまたは猫ちゃんに接種するように勧告されているワクチンのことを言います。
※・感染症の症状が非常に重篤になるもの
・人への感染リスクがあり、人の健康を害する危険があるもの
・その感染症が広く流行しており、容易に伝播して多数の動物に被害が広まる危険性があるもの
などの観点から”コア”とされています。
・ノンコアワクチン:個々の動物の住環境や病原体に関する情報を考慮し、必要に応じて接種するワクチンのことを言います。
<わんちゃんの混合ワクチン>
当院では様々な種類のワクチンの中で単味、PUPPY DP、5種と7種のワクチンをご用意しております。
今回はこの単味、PUPPY DP、5種と7種のワクチンについてご説明します。
コアワクチン
・ジステンパーウイルス:発熱、下痢、鼻炎、結膜炎、呼吸器、消化器症状および神経症状など様々な症状を示します。特に子犬では死亡率も高い感染症とされ恐ろしい感染症の一つです。
・犬伝染性肝炎:アデノウイルス1型により引き起こされる感染症で、下痢、嘔吐、食欲不振などを示し、肝炎を引き起こします。
・犬伝染性喉頭気管炎:アデノウイルス2型により引き起こされる感染症で、犬の呼吸器症候群(ケンネルコフ)の一つとされています。咳を主な症状とする呼吸器系疾患を引き起こします。混合感染などにより重篤化することがあります。
・犬パルボウイルス感染症:激しい下痢、嘔吐を引き起こし、食欲がなくなっていき衰弱死してしまう腸炎型と言われるものと、子犬に対して突然死を引き起こしてしまう心筋炎型と言われるものがあります。ジステンパーと並んで子犬にとって死亡率の高い恐ろしい感染症の一つです。
ノンコアワクチン
・犬パラインフルエンザウイルス感染症:犬の呼吸器症候群(ケンネルコフ)の一つであり、咳、鼻水などの風邪のような呼吸器症状を示します。
・レプトスピラ感染症:尿毒症、腎炎などを引き起こすカニコーラ型、肝障害による黄疸などの症状を引き起こすイクテロヘモラジー型などがあります。症状によってはたった数日で死に至ってしまう恐ろしい感染症です。また、人にも感染してしまう人獣共通感染症の一つとなります。
<猫の混合ワクチン>
当院では、様々な種類のワクチンの中で、3種と5種のワクチンをご用意しております。
今回はこの3種と5種のワクチンについてご説明します。
※当院では5種ワクチンについてはお取寄せという形を取らせていただいております。
コアワクチン
・猫ウイルス性鼻気管炎:ひどいくしゃみ、咳、鼻炎などの呼吸器症状や結膜炎を引き起こします。高熱が出て、食欲がなくなり、鼻水と涙で顔中がクシャクシャになり、典型的な風邪の症状を示します。
・猫カリシウイルス感染症:はじめはくしゃみ、鼻水、発熱などの風邪のような症状が見られ、症状が進むと舌や口の周辺に潰瘍が出来たりします。時には急性の肺炎を引き起こし、死に至ることもあります。
・猫汎白血球減少症:白血球が極端に少なくなってしまう病気で、高熱、嘔吐、食欲不振、下痢による脱水が引き起こされます。体力のない子猫などは、たった一日で死に至る恐ろしい病気です。
ノンコアワクチン
・猫白血病ウイルス:子猫などの免疫が不十分な場合は、免疫不全症、重度の血球減少、リンパ・造血系腫瘍の発生などが引き起こされ、重篤な症状を示します。
・猫クラミジア感染症:くしゃみ、結膜炎、結膜浮腫、眼からの膿性分泌物の排出などの症状を示します。混合感染により症状が重篤化する恐れもあります。
<ワクチネーションプロトコルとは?>
米国動物病院協会(AAHA)および世界小動物獣医師会(WASAVA)によってワクチンに対するガイドラインが提唱されています。このガイドラインによって、わんちゃん、猫ちゃんのどの時期や期間にワクチンを接種してくださいというのが推奨されています。この推奨されている時期や期間に沿って考えられたプロトコルのことをワクチネーションプロトコルと言います。
・わんちゃんの場合
コアワクチンとして指定されている4種のウイルスが含まれているワクチンに関しては、通常、生後6~8週以降のわんちゃんへ3~4週間隔で2回接種することが推奨され、移行抗体によるワクチン抗原への干渉を考慮して生後16週以降に再度接種する。つまり、合計3回以上接種することが推奨されています。
・猫ちゃんの場合
猫ちゃんの場合もコアワクチンとして指定されている3つのウイルスに関しては、わんちゃんと同様です。通常、生後6~8週以降の猫ちゃんへ3~4週間隔で2回接種することが推奨され、移行抗体によるワクチン抗原への干渉を考慮して生後16週以降に再度接種する。つまり、合計3回以上接種することが推奨されています。
<ワクチン接種前の注意事項>
・発熱
・元気および食欲がない
・病気の治療中または病気の治療直後
上記のようなことがある場合にはワクチンの接種はお勧めできません。
また、免疫介在性疾患、てんかん発作や癌の治療中に関しては獣医師にご相談ください。
<ワクチン接種後の注意事項>
ワクチン接種後は激しい運動は避けていただき、2・3日はシャンプーや入浴を避け、接種後の免疫ができるまでの約2~3週間は、他の犬や猫に近づけないようにしてあげてください。また、ワクチン接種後は、元気や食欲がなくなったり、軽度の発熱、便が柔らかくなる場合もありますが、普段と違った様子が見られるようでしたら、すぐにご連絡ください。
<ワクチン接種後の副作用(副反応)>
ワクチン接種後にはアナフィラキシー反応や、ワクチンアレルギーといった症状が見られることがあります。このような症状が見られましたら、近くの病院へすぐに向かってください。
・アナフィラキシー反応:通常、ワクチン接種後30分以内(稀に数時間後)に見られ、倒れる、ふらつく、舌色が悪い(チアノーゼ)、呼吸が荒いなどの循環器や呼吸器症状を示すことがあります。
・ワクチンアレルギー:顔面の腫脹(ムーンフェイス)、むくみ、痒み、紅斑、蕁麻疹などの皮膚症状、嘔吐や下痢などの消化器症状を示すことがあります。
・接種部位肉腫(猫のみ):接種してから数カ月~数年後に繊維肉腫などの腫瘍が形成されてしまうことがあります。
<ワクチンの追加接種について>
ワクチンによる免疫は一生続くものではありません。、免疫を持続させるためにも定期的な追加接種をしてあげることにより、免疫を高く維持しておくことが大切になります。
<ワクチン抗体価>
ワクチン接種後にはウイルスと戦うための”抗体”と呼ばれるものが作られますが、この抗体は時間とともに低下していってしまいます。近年では、この”抗体”がどのくらいあるのかを検査することが可能となり、これにより、どのくらい抗体が体内に残っているかを調べることが可能となりました。
(富士フィルム HPより)
犬だとコアワクチンとされている、
・ジステンパーウイルス
・パルボウイルス
・アデノウイルス(犬伝染性肝炎、犬喉頭気管炎)
猫だとコアワクチンとされている
・パルボウイルス(猫汎白血球減少症)
・カリシウイルス
・ヘルペスウイルス(猫ウイルス性鼻気管炎)
それぞれ3つのウイルスに対する抗体価が測定可能となっています。
ガイドライン上では、最終ワクチン接種後4週以降なら抗体価の測定が可能とされています。また、3回目のワクチン接種後、毎年抗体価を測定し、抗体価をもとにワクチンを接種の有無を判定する事が推奨されています。
ワクチンを接種することが出来ない場合や、毎年ワクチンを接種するのは負担になってしまうという方もいらっしゃると思います。その場合には、”ワクチン抗体価”を測定して獣医師とご相談されることをお勧めします。
<おわりに>
犬パルボウイルス感染症やジステンパーは子犬にとっては死亡率が高く非常に恐ろしい感染症です。また、猫においてもワクチンを接種してあげることで、もし感染してしまっても、非常に軽い症状で済むこともあります。そのため、早くにワクチンを接種して早くから免疫をつけてあげることが非常に大切となります。自分たちのためにも、なにより大切なご家族であるわんちゃん、ねこちゃんを守るためにも、早めに接種してあげましょう。
こちらも併せてご覧ください。
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