狂犬病予防

”狂犬病予防接種”、皆さんは毎年きちんと接種されていますか?どうして毎年接種しないといけないの?接種の必要はあるの?と思う方もいるかもしれません。狂犬病は皆さんが思っている以上に恐ろしい病気なんです。
今回はこの狂犬病について簡単にですがご説明したいと思います。
<狂犬病ってどんな病気?>
狂犬病はすべての哺乳類に感染し、発症したすベての動物の死亡率が100%と言われる程の恐ろしい病気です。この狂犬病は人獣共通感染症の一つであり、人でもわんちゃん同様100%の死亡率とされています。
特にわんちゃんによる感染が最も多く、日本では95%がわんちゃんでの感染が原因とされています。中でも咬傷が主な侵入経路になっており、わんちゃんに咬まれることによって、唾液中に含まれるウイルスが体内に直接侵入することで感染してしまいます。

(厚生労働省HPより)
<どんな症状が出るの?>
わんちゃんでは狂躁型と麻痺型に大きく分かれ、わんちゃんでは80~85%が狂躁型とされています。
潜伏期、前駆期を経て狂躁型または麻痺型へと発症していきます。
・潜伏期:約1週間から1.4年間、平均1か月程度と言われています。
・前駆期:食欲不振、元気消失、情緒不安定、光を避けるなどの異常行動が1~2日間続きます。また、大人しかった子が興奮しやすくなったりと性格の変化が見られます。
↓
・狂躁型:狂犬病特有の興奮状態や狂暴化が2~4日間続きます。多くの場合、発症から約5日程度、長くても約7日程度で死に至ってしまいます。
・麻痺(沈鬱)型:元気消失などを示した後に意識不明状態が1~2日間続きます。早い場合は1日、通常2~4日で死に至ってしまいます。
<治療法はあるの?>
狂犬病を発症してしまった動物では有効な治療法はないとされています。もし、症状が出てしまった場合には、早くて1週間程度で死に至ってしまいます。
<狂犬病予防接種法とは?>
1950年(昭和25年)に”狂犬病予防法”が制定されたことにより、日本では野犬の管理や飼い犬の予防接種が励行されるようになり、1957年の猫ちゃんの発生を最後に国内では発生が見られなくなりました。現在、日本では海外からの感染を国内に持ち込んでしまう”輸入感染症”と言われるもののみの発生となっていて、世界でも数少ない”狂犬病の清浄国”となり、過去10年間未発生の地域となっています。
狂犬病予防接種法ではわんちゃんの飼い主様に


1.現在居住している市区町村にわんちゃんの登録をすること
2.わんちゃんに年1回の狂犬病予防接種を受けさせること
3.鑑札と注射済票をわんちゃんに装着すること
の3つが法律により義務付けられています。
世界的に見ると、狂犬病は人で年間30,000~40,000件ほど発生しており、その55%がアジア地域、残りの45%がアフリカ地域での発生とされています。また、動物では50,000~60,000件ほどの発生があるとされています。日本ではほとんど見られませんが、海外では高い発生率があります。

<おわりに>

このように、狂犬病は一度発症してしまうとほぼ100%で死に至ってしまうほどの恐ろしい病気です。現在使用されている狂犬病ワクチンは、狂犬病の予防に極めて有効です。予防接種により感染の恐れを極力なくしてあげることで、近所の方々やわんちゃん・猫ちゃんが安心して生活することが出来ます。なにより、日本では狂犬病予防接種法により、毎年の予防接種が”義務”となっています。
自らの命だけでなく、大切なわんちゃん猫ちゃんの命を守るためにも決まった時期にきちんと接種してあげましょう。
こちらも併せてご覧ください。
その他の記事
-
心室中隔欠損症(VSD)
心臓は、様々な臓器に酸素を供給するために血液を送り出す器官です。 全身に酸素を供給した血液(=酸素が少ない血液。青い部分)を取り込んで、肺で酸素を取り込んだ血液(…
1年前 -
慢性腸症
慢性腸症の定義 『対症療法に抵抗性または再発性で3週間以上続く慢性の消化器症状を呈し、一般的な血液検査や画像検査で原因の特定には至らない、原因不明…
2年前
-
糖尿病性ケトアシドーシス
糖尿病性ケトアシドーシスとは内科エマージェンシーの1つであり、糖尿病が進行して発症します。発症メカニズムとしては、インスリン不足によりブドウ糖の細胞内への取り込みが減り、代…
5年前 -
胆嚢破裂を起こした胆嚢粘液嚢腫の犬
胆嚢粘液嚢腫は犬の代表的な緊急疾患の一つです。以前にも当院で胆嚢摘出術は数例行っておりますが、今回は胆嚢が合破裂し胆嚢内要物が腹腔内に播種した症例をご報告いたします。 …
2年前 -
胆嚢摘出術および総胆管ステント設置を実施した犬の1例
胆嚢粘液嚢腫とは、胆嚢内に可動性の乏しい胆汁由来の粘液状物質が過剰に貯留した状態です。この粘液状物質が過剰に貯留してしまうと胆嚢拡張を起こしたり、胆汁の流れ出る通り道である…
2週間前 -
猫の乳腺腫瘍
猫の乳腺腫瘍は犬の乳腺腫瘍と比較して悪性度が高く、おおよそ80%が悪性の癌であると言われています。雌猫に発生する腫瘍のうち17%が乳腺腫瘍であり、比較的発生率の多い腫瘍で…
7か月前 -
当院での避妊手術について、詳しい手術方法を解説します
皆さんが飼われているペットさんは避妊手術・去勢手術はされましたか?今回は当院での避妊手術について紹介したいと思います。 当院での避妊手術は「子宮卵巣摘出術」を採用…
2年前 -
消化器科
『消化器疾患』吐出、嘔吐や下痢、食欲不振や体重減少などが認められたら消化器疾患を考えます。消化器とは、口、のど、食道、胃、小腸(十二指腸・空腸・回腸)、大腸、肛門まで続く消…
2年前 -
副腎腫瘍・副腎腺腫摘出
副腎腫瘍は当院で手術が可能な腫瘍です。この腫瘍はその特性上 ①腫瘍の分類 ②副腎皮質機能亢進症の有無 ③血管への浸潤や位置関係 …
1年前 -
紐状異物
紐状異物は危険な異物の一つで、特に猫に多く見られます。 消化管は食べ物を消化・吸収するために蠕動運動をしています。紐によって手繰り寄せられた消化管は、蠕動運動によって…
2年前