呼吸器科
『当院では、様々な呼吸器疾患に対し質の高い診断や治療が可能にするために血液検査機器、血液ガス検査機器、胸部レントゲン検査、気管支鏡検査、ICU(集中治療室)、およびネブライザーなど様々な検査機器や治療機器を取りそろえております。当院では、呼吸器疾患には特に力を入れて診察しております。』
呼吸器疾患とは鼻(鼻腔)をはじめ喉、気管、気管支や肺に生じる病気の総称です。くしゃみや鼻水、咳や異常呼吸音(ヒューヒュー、ゼエゼエ)、呼吸困難などの症状が認められた場合は第一に呼吸器疾患を疑います。特に呼吸が苦しそうという症状は命に関わる状態でありすぐに治療が必要になるため的確な判断と治療が求められます。呼吸器診療の流れを以下に記載いたしました。
〜問診・身体検査〜
いつからその症状が始まったのか、安静時の呼吸の状態や呼吸回数、食欲や活動性など環境にも目を向け詳しくお話を聞かせていただきます。問診に加えて視診、聴診、触診など詳細な身体検査を行い、必要な検査項目をご提案いたします。
〜検査〜
全血球計算、血液生化学検査や、血液ガス検査、酸素飽和の測定など非侵襲的な検査を行い呼吸機能や体に生じている異変の概要を把握いたします。血液ガス検査は呼吸能力や酸塩基平衡を評価するためには特に重要であり、当検査で呼吸器の状態(どれくらいの酸素を取り込めているか、どれくらいの二酸化炭素を排出できているかなど)を理解します。下記に記載した麻酔下検査を行う上でも重要な検査となります。



またレントゲン検査やエコー検査など画像検査を用い、喉や気管気管支、肺の異常陰影などのがないか確認いたします。症状がない動物においても健康診断にて気管気管支や肺に異常が見つかることも少なくないため、画像診断は定期的に行うことをお勧めしています。


上記検査などで治療方針が決定しない場合や、治療反応が乏しい場合はさらに詳細な検査が必要になります。その場合、気管支鏡検査やCT検査(導入予定)、および組織生検を行うことで診断を行います。これらの検査は原則麻酔が必要になるため、麻酔前の評価が特に重要になります。

ラリンンゲルマスク


実際の気管支鏡検査の動画
〜治療〜
急性呼吸困難
ALI(急性肺障害)やARDS(急性呼吸窮迫症候群)や胸腔内液体貯留などで酸素が取り込めない状態陥っている場合は高濃度酸素療法や人工呼吸管理が必要になります。一刻を争う状態ですのでまずは緊急治療を行い患者さんの状態の安定化を図ります。また酸素が取り込めないだけでなく二酸化炭素が吐き出せない状態においても緊急治療が必要になることがあり、両者は呼吸様式や血液ガス検査にて判断することができます。


慢性呼吸器疾患
咳やレッチング、くしゃみ鼻水をはじめ慢性呼吸器疾患の治療は可能な限り診断に基づいて行います。内科治療には投薬治療はもちろん、ネブライザー治療や在宅酸素療法もご用意させていたいております。猫ちゃんではAero Catというストレスを与えない特殊な吸入治療もご用意しております。


ネブライザー
呼吸器疾患における外科手術
外科的な治療では短頭種気道症候群における軟口蓋切除術や、外鼻腔拡張術、また原発性気管虚脱(Grade 4)の手術や肺葉切除なども当院で行なっております。




呼吸器診療は急性か慢性かによってアプローチの仕方が大きく変わります。当院では必要であれば人工呼吸管理も行なっており救急救命治療にも力を入れています。咳が治らない、呼吸が苦しそうだが原因がわからない、胸のレントゲンに異常があると言われたなどお悩みのことがあればいつでもお問い合わせください。
その他の記事
-
副腎腫瘍・副腎腺腫摘出
副腎腫瘍は当院で手術が可能な腫瘍です。この腫瘍はその特性上 ①腫瘍の分類 ②副腎皮質機能亢進症の有無 ③血管への浸潤や位置関係 …
1年前 -
犬と猫の予防接種の重要性について
愛犬や愛猫の健康を守るために、予防接種はとても大切です。 予防接種は、犬や猫の健康を守るだけでなく人にも影響を及ぼす感染症を防ぐ重要な役割を果たします。 …
5か月前
-
慢性腸症
慢性腸症の定義 『対症療法に抵抗性または再発性で3週間以上続く慢性の消化器症状を呈し、一般的な血液検査や画像検査で原因の特定には至らない、原因不明…
2年前 -
気管支鏡を実施した猫の症例
呼吸器疾患に対する検査にはX線検査やCT検査等の画像診断に加えて、血液検査(動脈血液ガス分析)や気管支鏡検査、肺生検(病理検査)などが挙げられます。消化管や肝臓などの他の…
3年前 -
膝蓋骨脱臼
膝蓋骨脱臼とは、子犬に最も多いとされる先天性疾患であり、その割合は7.2%にも及びます。特に小型犬種に多く発生し、大型犬と比較するとその発生リスクは12倍とも言われています…
5年前 -
”麻酔前検査”をお勧めしています
手術をするにあたって、人の場合と同様に犬ちゃん猫ちゃんにも全身麻酔をかける必要があります。麻酔前検査では、この全身麻酔が安全にかけられるかどうかを評価するための検査となり…
2年前 -
低侵襲手術(内視鏡を用いた膀胱結石の摘出)
膀胱結石は犬、猫ともに発生頻度の多い泌尿器疾患です。体質により再発を繰り返すことが多いですが、手術時に細かな結石を取り残してしまうことによって術後早期に膀胱内に結石が確認…
2年前 -
食道バルーン拡張術にて治療した食道狭窄の猫の1例
食道狭窄とは食道内腔が異常に狭くなることで嚥下障害が生じる病態のことを言います。 主な原因としては、薬物や化学物質による化学的な粘膜傷害、過度な嘔吐や胃酸の逆流(逆流…
5か月前 -
2024年の春の健康診断まとめ
今年も春の予防シーズンが落ち着き、夏本番が近づいてきていますね。今年は早い時期から猛暑が続いているので、熱中症には十分気をつけて下さい。 ここからは、今年度の4~6月…
1年前 -
犬の弁膜症:僧帽弁閉鎖不全症(MMVD)
犬の弁膜症:僧帽弁閉鎖不全症(MMVD) 僧帽弁閉鎖不全症(以下 MMVD)は犬の心臓病の代表的な疾患です。犬の心臓の構造は人と類似しており、2心房2心室で…
2年前