2023年7月8日
心タンポナーデ
心タンポナーデとは心膜腔(心臓の外側)に液体(心嚢水)が貯留し、心臓を圧迫することで心臓の動きが制限され、機能不全を起こした状態です。全身に血液を送ることが出来なくなり、意識の消失や突然死を起こすことがある危険な状態です。
今回は心臓病の悪化から左房破裂を起こし、心タンポナーデになった症例をご紹介します。
症例は9歳10ヵ月のチワワさん(去勢雄)。もともと他院で心臓病と診断され、お薬を飲んでいる子でしたが数日前から呼吸が荒く、当日の朝にはぐったりしてきたとの事で来院されました。
来院時にはふらついて立ち上がれない状態で、オシロメトリック法による血圧測定では 79/41(50)mmHgと低血圧を呈していました。FAST検査を実施し、心タンポナーデを確認し、心嚢水の抜去を実施しました。







心嚢水を抜去して呼吸状態は落ち着き、血圧も維持されるようになりました。
抜去後は酸素室で管理し、状態が安定したのちに再度心臓の超音波検査を実施しました。
心臓内には出血を起こすような腫瘍は確認できず、重度の僧帽弁閉鎖不全症が認められたため左房破裂による心嚢水の貯留と診断致しました。
心臓の治療を強化して数日で酸素室から離脱でき、無事に退院していきました。
現在も予断を許さない日々は続きますが、安定した生活を送っています。
心臓病は臨床徴候がなくても、急変する可能性のある怖い病気です。早期発見と定期的な検診を心がけましょう。
その他の記事
-
副腎腫瘍・副腎腺腫摘出
副腎腫瘍は当院で手術が可能な腫瘍です。この腫瘍はその特性上 ①腫瘍の分類 ②副腎皮質機能亢進症の有無 ③血管への浸潤や位置関係 …
2年前 -
2022年の健康診断のまとめ
季節が過ぎるのは早いもので、あっという間に新年度を迎えました。 今年もワンちゃんのフィラリアの検査・予防が始まる時期になりました。 当院ではフィラリアの予防を始…
3年前
-
皮膚科
皮膚疾患はワンちゃんや猫ちゃんが予防以外で動物病院を受診する理由としてTOP3に入り、当院でも皮膚疾患で受診される方が多くいらっしゃいます。「痒がっている」、「皮膚が赤く…
3年前 -
食道バルーン拡張術にて治療した食道狭窄の猫の1例
食道狭窄とは食道内腔が異常に狭くなることで嚥下障害が生じる病態のことを言います。 主な原因としては、薬物や化学物質による化学的な粘膜傷害、過度な嘔吐や胃酸の逆流(逆流…
1年前 -
2022年の健康診断のまとめ
季節が過ぎるのは早いもので、あっという間に新年度を迎えました。 今年もワンちゃんのフィラリアの検査・予防が始まる時期になりました。 当院ではフィラリアの予防を始…
3年前 -
副腎腫瘍
副腎腫瘍にはいくつか分類があり、その由来として副腎皮質由来か副腎髄質由来かで分けられ、ホルモンを実際に産生・分泌するかどうかで機能性のものと非機能性のものに分けられます。副…
6年前 -
炎症性腸疾患<IBD>、慢性腸症
炎症性腸疾患<inflammation Bowel disease:IBD>
慢性腸症<chronic entropathy:CE> 小腸または大腸の粘膜固…7年前 -
犬の外傷性股関節脱臼
犬の起こりやすい外科疾患の中に股関節脱臼というものがあります。股関節脱臼は全ての外傷性脱臼の中でも最も発生が多く、全ての年齢に起こり、犬種や性差に関係なく発生します。主に…
2年前 -
整形外科
整形疾患というと骨折が思い浮かぶと思いますが、その他にもワンちゃんネコちゃんで起こりやすい整形疾患があります。このページでは代表的な整形疾患に関してご紹介していきます。 …
3年前 -
腎瘻チューブの設置により尿管が疎通した腎盂腎炎の症例
腎孟腎炎は腎孟および腎実質の炎症で,原因としてもっともよくみられるのは細菌感染です。 今回は腎盂腎炎に伴い尿管閉塞を起こした猫に対して、経皮的に腎瘻チューブを設置し、…
4年前
