幽門狭窄の症例に対して内視鏡下でポリペクトミーを実施した犬の1例
ご飯を食べてから時間が経っているのに吐き戻すなんてことはありませんか?
嘔吐という症状はよく認められる症状のひとつなため、どんな疾患でも考えられるものになります。今回はこの嘔吐の原因の一つになる幽門部狭窄について解説していきます。

📌目次


幽門狭窄とは?
幽門狭窄とは、胃と小腸を繋ぐ幽門部(胃の出口)が何らかの原因で狭くなることによって、胃の内容物が胃から流れにくくなる病気です。
この病気には生まれつき(先天性)のものと、後から出てくる(後天性)ものに分けられます。先天性のものは良性幽門筋肥大ともよばれ、ボストン・テリア、ブルドッグ、ボクサーなどの短頭種に多いとされています。後天性のものには、胃炎や異物、ポリープや腫瘍などによって二次的に発生します。中高齢の短頭種、特にシー・ズーやマルチーズなどの小型犬での発生が多いとされています。

症例情報
今回の症例は4歳9カ月のシー・ズーの女の子です。食欲はあるが、食べると吐いてしまうとの主訴で他院を受診。セカンドオピニオンとして当院を受診されました。

検査
他院でレントゲン検査を実施し、胃拡張が認められていました。


超音波検査の結果、胃の幽門部に壁の肥厚が認められました。

検査の結果、幽門部の壁の肥厚(粘膜の過形成や腫瘍、ポリープなど)による通過障害が疑われました。

実際の内視鏡写真
幽門部狭窄が疑われたため、内視鏡検査を実施することとなりました。

内視鏡検査にて幽門部のポリープが認められたため、内視鏡下にてポリープを切除しました。

病理組織学的検査
病理組織学的検査の結果は、粘膜過形成性ポリープとの診断でした。

粘膜過形成性ポリープは良性腫瘤になるため、切除により通過障害が改善されれば予後は良好となります。

まとめ
幽門を狭窄するような胃内異物の場合は、摘出が可能で穿孔などの合併症がなければ予後は良好になります。また、外科的矯正を行った場合の予後も一般的には良好ではありますが、なかには術後期待通りに排出が改善しないこともあります。そのため、処置を実施した後も注意が必要になります。

Q&A
Q. どんな症状が出てきますか?
A. 主に嘔吐が認められます。食事をしてから数時間以上経ってから、消化された食事を吐くことが多く、他にも食欲低下や体重減少などが認められます。
Q. 原因は何がありますか?
A. 原因には先天性のものと後天性のものがあります。先天性のものには、ボストン・テリア、ブルドッグ、ボクサーなどの短頭種などに発生するもの。後天性のものには、胃炎や異物、ポリープや腫瘍などによって二次的に発生するものがあります。中高齢の短頭種、特にシー・ズーやマルチーズなどの小型犬での発生が多いとされています。
Q. どのような検査をしますか?
A. 幽門狭窄の診断には、主に画像検査と病理組織学的検査によって実施されます。バリウムを用いたレントゲン検査や、超音波検査、内視鏡検査などを用いて総合的に判断します。
Q. 治療はどんなことをしますか?
A. 物理的な閉塞の場合には、内視鏡や開腹手術による摘出が必要となる場合があります。対して機能的な閉塞の場合には、内科療法や食事療法が適応となる場合があります。
その他の記事
-
尿管結石摘出術
尿管結石は文字通り腎臓と膀胱をつなぐ『尿管』に結石が詰まってしまい、二次的に腎臓に損傷が生じる疾患です。片方の尿管に閉塞しただけでは主だった症状は認められませんが…
3年前 -
尿石症
尿石症とは、尿路のいずれかの部位で、尿中の溶解性の低い晶質から結石形成に至り、これが停留し成長することによって尿路の炎症・頻尿・乏尿・閉塞などの徴候を引き起こす疾患です。そ…
6年前
-
腹腔鏡下肝生検
ワンちゃんやネコちゃんでも健康診断で肝臓の数値が高い子を多くみかけます。一般的には症状がなく、元気そうにみえる子がほとんどですが、重病が隠れていることもあります。 …
2年前 -
犬の甲状腺機能低下症について | 元気がないや皮膚症状は甲状腺機能低下症の初期症状かも? ~検査および診断編~
こちらの記事では甲状腺機能低下症における検査および診断について解説していきます。 甲状腺機能低下症では、様々な検査が検査が併用される場合があります。 甲状腺機…
7か月前 -
犬と猫の副腎腫瘍について解説 | よくお水を飲む、尿が薄くて多いは病気の初期症状かも!? ~症状編~
こちらの記事では副腎腫瘍の症例で良く認められる症状について解説していきます。 副腎腫瘍の性質や種類によって出てくる症状は様々になります。 ぜひ最後までお読みいた…
9か月前 -
犬の胆嚢粘液嚢腫について | 進行してから症状が現れる恐い病気でもあります
胆嚢粘液嚢腫とは主に犬で多く見られる疾患で、胆嚢という臓器に可動性の乏しい粘液が過剰に溜まることで発症するとされています。一昔前までは稀な疾患とされていましたが、近年では…
5か月前 -
角膜疾患(潰瘍性角膜炎)
角膜疾患とは、角膜、いわゆる黒目の部分に起こる疾患を指します。角膜疾患では「目を開けずらそう」「涙や目ヤニの量が多い」「まぶしそうにしている」という症状がよく見られます。 …
3年前 -
右骨盤部分切除および断脚を実施した犬の1例を紹介します
四肢(足)に発生する腫瘍は悪性のものが多く、大型犬の中高齢で特に多く見られ、急速に進行していくのが特徴です。症状としては足の腫れや跛行(びっこ)が主な症状になります。 …
2か月前 -
ネコちゃんに多い内分泌疾患 甲状腺機能亢進症
甲状腺は喉にあり、甲状腺ホルモンを分泌します。甲状腺から異常にホルモンが分泌されてしまう病気を甲状腺機能亢進症と言います。 診断するにはそれほど複雑…
1年前 -
リンパ節生検を実施した犬の小細胞性リンパ腫/慢性リンパ球性白血病(CLL)の症例
慢性リンパ球性白血病(CLL)は腫瘍化したリンパ系細胞が分化能を有しているために成熟リンパ球が増加する疾患で、腫瘍性病変の原発部位が骨髄である場合は慢性リンパ性白…
2年前
