ご予約はこちら
045-932-5151
2025年2月24日

犬アトピー性皮膚炎|治療の2本柱

今回は犬アトピー性皮膚炎の治療方法について詳しくお話していきます。

犬アトピー性皮膚炎の病態についてはこちらで解説しているので合わせてご覧ください。

====================================

「犬アトピー性皮膚炎の治療の2本柱」

アトピー性皮膚炎は簡単に言うと「皮膚が弱い(広義)」状態です。

ですので、治療の基本としては皮膚の状態をできるだけ向上させることが第一で、それでも漏れてくる痒みに対して痒み止めを使用することになります。

 

1⃣皮膚バリアの強化

 皮膚バリアの強化としては、①食事療法②スキンケアがあります。

 ①食事療法  アレルギー食などの療法食。

 ②スキンケア  ⑴外から・・・いわゆる保湿。入浴剤、ムース、スプレータイプなど様々あります。

         ⑵内から・・・サプリメント:乳酸菌、必須脂肪酸、ビタミン、亜鉛など。

FINAL ANSWER (公式HPはこちら)

                

2⃣痒み止め

 ①内服薬

  ⑴抗ヒスタミン・・・花粉症の薬と同じ成分。

            利点:安価。少し眠くなる副作用があるがその他の大きな副作用はなし。即時性アレルギーや環境性アレルギーに効果あり。

            欠点:効果は限定的で、劇的な改善は期待できないことがある。

  ⑵アポキル・・・免疫抑制剤。有効成分:オクラシチニブ 1日に2回~頓服

          利点:即効性あり。抗搔痒作用◎

          欠点:高価(1日数百円~)。 長期的な使用で、腎数値の悪化、感染↑、腫瘍↑(3年間の研究では有意差なし)などの副作用あり。

公式HPはこちら

  ⑶ステロイド・・・免疫抑制剤。 1日に1回~数日おきに1回

           利点:安価。即効性あり。抗搔痒作用◎

           欠点:長期的な使用で、肝/腎数値の悪化、心臓病悪化、皮膚炎の悪化、内分泌疾患リスク上昇、糖尿病リスク上昇など様々なリスクが高くなる。

  ⑷シクロスポリン・・・免疫抑制剤。 1日1回~数日おきに1回

             利点:脂漏症の子で効果◎ 血中濃度が維持できていれば2-3日に1回に減らせる

             欠点:高価。即効性がなく、血中濃度が上がって効果が出るまでに数週間かかる。

  

 ②注射薬  サイトポイント・・・1か月に1回の皮下注射。高価(1回¥10.000~)だが、上記の免疫抑制剤よりは副作用が少ない。

公式HPはこちら

 ③外用薬  免疫抑制薬・・・ステロイド等

基本的には1⃣皮膚バリアの強化が治療のメインですが、皮膚のターンオーバーの関係上、治療を始めて約1か月くらい経ってようやく効果が表れるので、それまではどうしても薬物療法が必要になります。

====================================

このように、アトピー性皮膚炎の治療は皮膚の状態と痒みに合わせてオーダーメイドで治療をしていきます。

「どんな痒み止めを使っても痒みが良くならない」「今使っている薬をできるだけ減らしたい」などがありましたらお気軽にお問い合わせください。

   

⇩こちらも是非ご覧ください⇩

当院の皮膚科診療について

その他の記事

  • 尿管結石摘出術

      尿管結石は文字通り腎臓と膀胱をつなぐ『尿管』に結石が詰まってしまい、二次的に腎臓に損傷が生じる疾患です。片方の尿管に閉塞しただけでは主だった症状は認められませんが…

    2年前
  • 両側に胸腔ドレーンを設置し救命した膿胸の猫

    救急診療時間内にきた膿胸の猫の一例を紹介いたします。   症例 雑種猫 1歳 避妊メス 数日前から元気がなく今日になって呼吸が苦しそうとのことで来院されました。…

    10か月前
  • 整形外科

     整形疾患というと骨折が思い浮かぶと思いますが、その他にもワンちゃんネコちゃんで起こりやすい整形疾患があります。このページでは代表的な整形疾患に関してご紹介していきます。 …

    2年前
  • ノミ・ダニ予防

    ノミやダニと聞くと、痒いというイメージを持たれる方が多いと思います。しかし、ノミやダニは痒みを引き起こすだけでなく、わんちゃんや猫ちゃん、さらには人にも様々な病気を引き起こ…

    2年前
  • 犬と猫の予防接種の重要性について

    愛犬や愛猫の健康を守るために、予防接種はとても大切です。 予防接種は、犬や猫の健康を守るだけでなく人にも影響を及ぼす感染症を防ぐ重要な役割を果たします。 …

    2か月前
  • 犬の脾臓腫瘍

    犬の脾臓腫瘍は中・高齢で好発し、1/3~1/2が悪性とされています。腫瘍破裂や出血により劇症を呈することもあれば、症状が認められない場合も少なくありません。今回紹介…

    2年前
  • 狂犬病予防

    ”狂犬病予防接種”、皆さんは毎年きちんと接種されていますか?どうして毎年接種しないといけないの?接種の必要はあるの?と思う方もいるかもしれません。狂犬病は皆さんが思…

    2年前
  • 腹腔鏡補助下で実施した潜在精巣摘出術

     潜在精巣とは片側または両側の精巣が陰嚢内に下降していない状態をいいます。ビーグルや雑種犬における精巣下行のタイミングは生後30~40日と言われており、2ヶ月齢の時点で精巣…

    9か月前
  • 犬の口腔内無顆粒性悪性黒色腫

    犬の口腔内腫瘍には悪性黒色腫、扁平上皮癌、線維肉腫など様々な種類の腫瘍が発生することが報告されています。この中でも悪性黒色腫は口腔内腫瘍の中で最も発生率の高い腫瘍とされ、半…

    9か月前
  • 高カルシウム血症

    普段血中のカルシウム濃度は厳密に調整されていますが、恒常性が破綻してしまうと高カルシウム血症が生じてしまいます。軽度の高カルシウム血症の場合は無症状のことが多く、偶発的に見…

    1年前