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2025年1月7日

猫の乳腺腫瘍

 猫の乳腺腫瘍は犬の乳腺腫瘍と比較して悪性度が高く、おおよそ80%が悪性の癌であると言われています。雌猫に発生する腫瘍のうち17%が乳腺腫瘍であり、比較的発生率の多い腫瘍です。

年齢や性別

 発生は10~12歳に多く、高齢ほど悪性腫瘍の発生率が増加します。

 性ホルモンとの関連が知られており、早期の避妊手術は乳腺腫瘍の発生率を低下させます。避妊手術の時期に応じ、6ヶ月以下で9%、7〜12ヶ月齢で14%、13〜24ヶ月齢で89%に低減する。24ヶ月齢以降での避妊手術では発生率は低下しないとされています。雄でも稀に乳腺腫瘍が発生することがあります。

臨床徴候

 多くの症例では無徴候で、自宅でのグルーミングや身体検査時に偶発的に見つかることが多いです。腫瘍が大きくなると自壊し、出血や滲出液を伴うことがあります。高確率で肺への転移を起こすため、進行した症例では呼吸困難や発咳、元気や食欲の低下が認められます。このため、早期発見と早期治療が望ましいです。

診断

 乳腺部の腫瘤の触知と細胞診により診断します。犬の乳腺腫瘍と異なり、悪性度が高い腫瘍の発生が多いので診断は比較的容易である。体表の腫瘤を針で穿刺するため、基本的には全身麻酔は必要なく、ほとんどの症例で無麻酔・無鎮静で検査が可能です。腫瘍のステージングのためにX線検査やCT検査などの画像検査を実施することもあります。リンパ節の腫大や肺への転移などを評価します。

細胞診
肺転移と胸水貯留

治療

 治療は腫瘍の臨床ステージに寄りますが、第1選択は外科手術です。すでに遠隔転移が認められているstage4の場合は予後が悪く、外科手術はお勧めできません。

 切除範囲は両側乳腺切除、片側乳腺切除、領域乳腺切除、領域乳腺切除がありますが、再発や予後の観点から両側乳腺切除が推奨されます。ただし、広範囲の皮膚欠損により傷口の裂開などの合併症が発生するため、片側の腫瘍であれば片側乳腺切除を実施し、時間を空けて段階的に両側乳腺切除を実施することもあります。

両側乳腺切除後の傷口

 外科手術時にリンパ節転移や脈管浸潤などが認められた場合は残存病変に対して化学療法(いわゆる抗がん剤)を実施することがあります。代表的な抗がん剤としてはドキソルビシンやシクロフォスファミド、トセラニブなどです。術後の化学療法に対しては明確に効果が実証されているものはありませんが、一定の効果は期待できます。実際に抗がん剤を投与するかは獣医師と相談の上、慎重に決める必要があります。

予後

 猫の乳腺腫瘍の予後はどの段階で治療ができたかによって変わります。stage1の症例ではおおよその生存期間が2年ほど、stage2では1年ほど、stage3では半年ほど、stage4では1ヶ月ほどとされています。また、腫瘍の大きさでも予後が異なるという報告があります(2cm>だと長期生存、3cm<だと半年ほど)。

まとめ

 他の腫瘍でもそうですが、猫の乳腺腫瘍は特に早期発見・早期治療が大事です。お家でよく触ってあげることでしこりが見つかることもあります。また、前述のように早期の避妊手術で発生率は大きく低下するため、予防のためには避妊手術を検討することも重要です。当院では腹腔鏡も用いた傷の小さな避妊手術も実施していますので、ご検討の方はお問い合わせいただければと思います。

 また、人の乳がんに対しての『ピンクリボン運動』のように猫ちゃんでも『キャットリボン運動』があります。猫ちゃんの乳腺腫瘍に対しての情報も載っているので、こちらのサイトもご覧ください。

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