若い犬や猫に見られる皮膚糸状菌症(真菌感染症)とは?
皮膚糸状菌症とは、皮膚糸状菌と呼ばれる真菌(カビの仲間)による感染症であり、人にも感染するため人獣共通感染症とされています。猫ちゃんでは原因菌として20種ほどが報告されていますが、中でもMicrosporum.canisと呼ばれる菌種による感染が最も多いとされています。
皮膚糸状菌症は免疫の弱い若齢の猫ちゃんでの発生が最も多いですが、環境要因などによって免疫が弱っている場合、大人の猫ちゃんや犬ちゃんでも発生が認められています。この菌はケラチンが豊富な被毛に感染巣を作りますが、免疫が弱ったタイミングで菌が被毛や角質内に侵入することで感染し、脱毛などの症状を引き起こします。
よくみられる症状 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
通常、病変はマズル、顔面、頭部、耳介、四肢端、尾に発生することが多く、被毛や毛包を中心に感染し、鱗屑(ふけ)を伴う裂毛や脱毛班、紅斑などが認められます。通常、痒みはないか軽度のことが多いですが、時に強い痒みを伴うこともあります。

診断 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
・ウッド灯検査:紫外線照射により、皮膚糸状菌が産生する物質を蛍光発色させることで、皮膚糸状菌を疑うことが出来る。

・真菌培養検査:特殊な培地に接種することで、周囲の培地を変色させる特性を利用して、早期に皮膚糸状菌の特定を行う。

・被毛の直接鏡検:感染している被毛には、菌体(分節分生子)や膨化した被毛などの特徴的な所見が認めれる場合がある。

治療 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
治療に関しては大きく2つの目的があります。
1,動物に対する治療
・全身療法:抗真菌薬を飲むことで成長あるいは発毛した毛の糸状菌の感染を抑えます。体表から糸状菌が検出されなくなるまで、1~2カ月程度かかります。
・外用療法:シャンプーや外用薬を用いて治療を行います。局所の場合は有効ですが、糸状菌は毛根部まで侵入していることが多いため、全身療法が必要な場合もあります。
2,生活環境の清浄化
皮膚糸状菌症は動物同士でも伝染しやすく、お家などの環境にも汚染し、人にも伝染する可能性があります。そのため、動物の治療だけではなく環境や同居の子への配慮が必要になってきます。基本は隔離と掃除が必要になります。しかし、隔離といっても感染動物の多くは若齢な子が多いため、掃除がしやすい部屋やある程度許容できる範囲で隔離するのが望ましいです。
まとめ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
皮膚糸状菌症は完治するまでに比較的時間がかかることもあり、環境のキレイになっていない場合には再発する可能性もある病気です。また、人にもかかる人獣共通感染症でもあるため、人でも注意が必要となります。子猫さんで上記のような症状が認められた場合には皮膚糸状菌症の可能性もあるので、お近くの動物病院にご相談下さい。

症状の例にいた子猫さんですが、ただしく治療できればこのように症状も良くなっていきます。
※他の皮膚疾患についてはこちらから
その他の記事
-
犬の尿石症について ~症状や治療法について説明します~
尿石症とは?
尿石症とは、腎臓や尿管、膀胱、尿道などの尿路のいずれかの部位に結石ができる病気です。結石が存在する部位によって、…1年前 -
犬アトピー性皮膚炎|病態について
アトピー性皮膚炎とは、 「遺伝的素因を有した、痒みを伴うT細胞(炎症細胞の一種)を主体とした炎症性皮膚疾患」 と定義されています。 「遺伝的素因」を有して…
2年前
-
犬と猫の慢性腎臓病(CKD)について解説 | 多尿や体重減少は慢性腎臓病の初期症状かもしれません! 〜症状編〜
こちらの記事では、慢性腎臓病(CKD)でよくみられる症状について解説していきます。 腎臓は体内の老廃物を排出したり、体液や電解質のバランスを保ったりと重要な臓器です…
6か月前 -
犬アトピー性皮膚炎|治療の2本柱
今回は犬アトピー性皮膚炎の治療方法について詳しくお話していきます。 犬アトピー性皮膚炎の病態についてはこちらで解説しているので合わせてご覧ください。 =====…
1年前 -
肥満細胞腫
肥満細胞腫は、犬の皮膚腫瘍のうち20%前後を占めるため、犬の腫瘍では遭遇することの多い疾患にあたります。主にしこりの付近のリンパ節、続いて肝臓、脾臓へ転移することも多いため…
4年前 -
消化器科
『消化器疾患』吐出、嘔吐や下痢、食欲不振や体重減少などが認められたら消化器疾患を考えます。消化器とは、口、のど、食道、胃、小腸(十二指腸・空腸・回腸)、大腸、肛門まで続く消…
3年前 -
右骨盤部分切除および断脚を実施した犬の1例を紹介します
四肢(足)に発生する腫瘍は悪性のものが多く、大型犬の中高齢で特に多く見られ、急速に進行していくのが特徴です。症状としては足の腫れや跛行(びっこ)が主な症状になります。 …
2か月前 -
肺高血圧症
今回の症例は『肺高血圧症(pulmonary hypertension: PH)』です。
肺高血圧症は肺動脈圧の上昇を主として、様々な疾患から2次的に生じることの多い…6年前 -
内視鏡で誤食した釣り針を摘出
釣り針を食べてしまったとの事で来院した7カ月のワンちゃん。 X線検査を実施すると胃の中に釣り針が・・・。 釣り針のような尖ったものは…
4年前 -
尿管結石摘出術
尿管結石は文字通り腎臓と膀胱をつなぐ『尿管』に結石が詰まってしまい、二次的に腎臓に損傷が生じる疾患です。片方の尿管に閉塞しただけでは主だった症状は認められませんが…
3年前
