ご予約はこちら
045-932-5151
2024年8月18日

高悪性度消化器型リンパ腫を外科摘出後、抗がん剤を行なった猫

消化器型リンパ腫は猫のリンパ腫のうち最も多くの割合を占めるものであるのと同時に、猫の消化管において最も発生率の高い腫瘍としても知られています。

 

症例 猫 雑種 7歳 避妊メス

 

下痢と食欲不振を主訴に来院しました。血液検査と腹部超音波検査を実施したところ空腸遠位から回腸にかけて5層構造が消失し、粘膜の重度肥厚を呈した腫瘍を確認しました。CT検査において回腸腫瘤及び転移を疑う結腸リンパ節の腫大も認められました。

 

Screenshot

FNAにより大細胞性リンパ腫を強く疑診いたしました。リンパ腫は基本的に抗がん剤が適応になる腫瘍ですが、消化器型リンパ腫は抗がん剤への治療成績が悪く、抗がん剤投与後に消化管穿孔を生じることも珍しくありません。今回は周囲リンパ節の腫大は認めたものの腫瘍は限局性であったため、飼い主様と相談の上外科的に摘出したのち補助療法として抗がん剤を行うことを決定しました。

 

外科手術では腫瘤を摘出したのち回腸遠位と空腸近位を吻合いたしました。リンパ腫など腫瘍を摘出する際には吻合する組織に腫瘍細胞が存在する場合があるため、丁寧に縫合する必要があります。また当院では術後に吻合部位が離開しても対処が行えるように、アクティブドレーンを設置して閉腹します。

J-vac ドレーンの設置

術後の経過は良好で創部の理解も認められませんでした。

病理検査及びクローナリティ検査にて上記診断が得られました。本症例では外科治療後の補助療法としてCOPプロトコールを取り入れ完全寛解に突入。現在も寛解状態が継続していると考えられます。

 

リンパ腫は猫では本当に発生が多く、発生する場所によって様々な経過をたどります。ベースとなる治療は抗がん剤ですが、本症例のように限局した腫瘤を形成するリンパ腫の場合は外科的に摘出をしたのちに補助的に抗がん剤を使用することもあります。

 

猫のリンパ腫も多く診察しておりますので、お悩みのことがあればいつでもご相談ください。

その他の記事

  • 糖尿病性ケトアシドーシス

    糖尿病性ケトアシドーシスとは内科エマージェンシーの1つであり、糖尿病が進行して発症します。発症メカニズムとしては、インスリン不足によりブドウ糖の細胞内への取り込みが減り、代…

    5年前
  • 犬アトピー性皮膚炎|治療の2本柱

    今回は犬アトピー性皮膚炎の治療方法について詳しくお話していきます。 犬アトピー性皮膚炎の病態についてはこちらで解説しているので合わせてご覧ください。 =====…

    6か月前
  • 2024年の春の健康診断まとめ

    今年も春の予防シーズンが落ち着き、夏本番が近づいてきていますね。今年は早い時期から猛暑が続いているので、熱中症には十分気をつけて下さい。 ここからは、今年度の4~6月…

    1年前
  • 犬の口臭の裏に潜むリスクとは?|考えられる原因と対策を解説

    愛犬の顔に近づいたとき、「いつもより口が臭うかも…」と感じたことはありませんか? こうしたニオイは単なる不快な症状ではなく、犬の体の中で起きている異常を知らせ…

    2か月前
  • セカンドオピニオン

    セカンドオピニオンとは、現在受けている治療や診断に関して第二の意見を求めることを言います。 当院ではセカンドオピニオンで来られた患者さまに対してまず丁寧にお話を聞くこ…

    2年前
  • 気管支鏡を実施した猫の症例

     呼吸器疾患に対する検査にはX線検査やCT検査等の画像診断に加えて、血液検査(動脈血液ガス分析)や気管支鏡検査、肺生検(病理検査)などが挙げられます。消化管や肝臓などの他の…

    3年前
  • 炎症性腸疾患<IBD>、慢性腸症

    炎症性腸疾患<inflammation Bowel disease:IBD>
    慢性腸症<chronic entropathy:CE> 小腸または大腸の粘膜固…

    6年前
  • 尾状葉乳頭突起の肝葉切除(肝細胞癌) 

    犬の肝臓の腫瘍性疾患において一番多く発生する腫瘍は肝細胞癌です。日常の臨床的にもよく遭遇する腫瘍で、発生の形態によって孤立性、多発性、び慢性に分けられます。経過としては徐々…

    12か月前
  • 2025年 春の健康診断の結果をまとめました!

    こんにちは!春のフィラリア検査・健康診断シーズンが終わり、すっかり真夏の暑さが到来しています。
    今年もたくさんのわんちゃん・ねこちゃん達が健康診断のために来院してくれ…

    1か月前
  • 酸素中毒

     皆さんは「酸素中毒」というものをご存じでしょうか。スキューバダイビングなどで酸素ボンベを使ったことがある方は耳にされたことがあるかもしれませんが、実は酸素にも中毒…

    3年前