ご予約はこちら
045-932-5151
2025年2月26日

ネコちゃんに多い内分泌疾患 甲状腺機能亢進症

甲状腺は喉にあり、甲状腺ホルモンを分泌します。甲状腺から異常にホルモンが分泌されてしまう病気を甲状腺機能亢進症と言います。

 

診断するにはそれほど複雑な検査が必要なわけではありませんが、甲状腺機能亢進症だけに特徴的な症状がありません。中高齢に多い病気であるため、老化現象だと認識されて無治療のまま長時間放置される場合も少なくありません。

 

猫の甲状腺機能亢進症の原因は主に下の3つです。 
①甲状腺の結節性過形成
②甲状腺腫
③甲状腺がん
3つのうち甲状腺腫が最も一般的で、甲状腺がんの発生率は5%未満と知られています。
 

症状 

 

甲状腺ホルモンは代謝を促進する作用があり、体を活発にしてくれますが、異常に分泌されることで様々な症状が現れます。

  

  • ●食べている量は減っていないのに痩せてきた
  • ●食欲がないか、ありすぎる
  • ●嘔吐
  • ●下痢
  • ●落ち着きがない
  • ●元気がない
  • ●ひんやりした場所を好む

 

また甲状腺ホルモンが異常に分泌されることで、心筋症や高血圧などを併発し、様々な二次的徴候が現れます。 

 

診断

 

身体検査で首にある甲状腺を触ると、正常より腫れていることがあります。
ただし腫大している甲状腺が触れるのは2-3割程度なので、身体検査では分からないことの方が多く、診断には血液検査が必要です。
血液検査では甲状腺ホルモン濃度を測定します。ホルモン濃度が異常に高い場合は確定診断となります。 

 

治療

 

内科治療(薬と食事療法)と外科治療(甲状腺摘出)があります。

 
一般的にはいきなり手術をすることはなく、まずは内服(ホルモンを出させなくする薬)で症状のコントロールを目指します。内科療法は、あくまでも甲状腺ホルモンを減らして症状を改善することが目的であり、甲状腺の異常そのものを治療してくれるわけではないので、一生涯にわたって内服を続ける必要があります

 
また甲状腺ホルモンは血液の循環を活発にするため、甲状腺機能亢進症では腎臓への血流が良くなり慢性腎臓病が隠されてしまう場合があります。内科療法を開始することでそれまで隠れていた慢性腎臓病の症状が出てしまい、腎臓病の治療も必要になることがあります。

 
外科による甲状腺摘出は、内科療法を行っても症状の改善が見られない場合や、内服薬の副作用が強く出てしまう場合に適用になります。

 

予後

 

慢性腎臓病を併発していなければ、治療によって予後は良好です(生存中央値5.3年)。

 

まとめ

 

甲状腺機能亢進症は中高齢のネコちゃんに多く見つかる疾患で、早期発見して適切な治療を行うことで長期間の延命が期待できる病気です。適切な治療を行うためには定期的な検査が必要で、甲状腺ホルモンの測定だけではなく、腎臓病、高血圧、心臓病も同時にモニタリングする必要があります。 

 
症状がわかりにくいことが多いので、早期発見が遅れることもよくあります。代謝が亢進するせいで食欲が増すため、病気に見えないことが良くありますが、食べているのに痩せてくる特徴があります。

 

日頃からご飯への食いつきを観察したり、体重を記録しておくと早期発見につながるかもしれません。

その他の記事

  • 猫の乳腺腫瘍

     猫の乳腺腫瘍は犬の乳腺腫瘍と比較して悪性度が高く、おおよそ80%が悪性の癌であると言われています。雌猫に発生する腫瘍のうち17%が乳腺腫瘍であり、比較的発生率の多い腫瘍で…

    8か月前
  • 犬の弁膜症:僧帽弁閉鎖不全症(MMVD)

    犬の弁膜症:僧帽弁閉鎖不全症(MMVD)   僧帽弁閉鎖不全症(以下 MMVD)は犬の心臓病の代表的な疾患です。犬の心臓の構造は人と類似しており、2心房2心室で…

    2年前
  • 「たくさん水を飲む」「たくさんおしっこする」は病気のサインかもしれません!

    こんにちは!最近は日ごとに気温があがり、夏の暑さが本格的に到来しつつあります。 私たちヒトと同じように、動物も暑くなるとのどが渇いてたくさん水を飲むようになり…

    3か月前
  • 尾状葉乳頭突起の肝葉切除(肝細胞癌) 

    犬の肝臓の腫瘍性疾患において一番多く発生する腫瘍は肝細胞癌です。日常の臨床的にもよく遭遇する腫瘍で、発生の形態によって孤立性、多発性、び慢性に分けられます。経過としては徐々…

    12か月前
  • 猫の盲腸腺癌

    猫の体重減少には様々な原因があります。甲状腺機能亢進症や慢性腎不全、糖尿病や腫瘍などが代表的な疾患です。特に、このような病気は急激に体調に変化をもたらすわけではなく、ゆっく…

    3年前
  • 犬アトピー性皮膚炎|治療の2本柱

    今回は犬アトピー性皮膚炎の治療方法について詳しくお話していきます。 犬アトピー性皮膚炎の病態についてはこちらで解説しているので合わせてご覧ください。 =====…

    6か月前
  • ノミ・ダニ予防

    ノミやダニと聞くと、痒いというイメージを持たれる方が多いと思います。しかし、ノミやダニは痒みを引き起こすだけでなく、わんちゃんや猫ちゃん、さらには人にも様々な病気を引き起こ…

    2年前
  • 犬と猫の予防接種の重要性について

    愛犬や愛猫の健康を守るために、予防接種はとても大切です。 予防接種は、犬や猫の健康を守るだけでなく人にも影響を及ぼす感染症を防ぐ重要な役割を果たします。 …

    5か月前
  • 腫瘍科

     獣医療の発展に伴いペットの長寿化が進み、ペットの死因でも悪性腫瘍(ガン)が上位を占めるようになってきました。   犬の平均寿命 14.76 歳、猫の平…

    2年前
  • 犬・猫の去勢手術

    【去勢手術のタイミングは?】 去勢手術をするにあたって、この時期・この年齢に必ず受けないといけないというものはございません。しかし、子犬・子猫ちゃんの場合は、性成熟を…

    2年前