副腎皮質機能低下症(アジソン病)について解説 | 最近いつもより元気や食欲がないは病気のサインかも?~治療編~
こちらの記事では副腎皮質機能低下症(アジソン病)の症例で必要な治療について解説していきます。
副腎皮質機能低下症(アジソン病)は、生涯にわたる投薬が必要になりますが、適切に維持ができれば、普通の子と同じくらいの寿命を生きることができます。
治療について解説しますので、ぜひ最後までお読みいただき参考にしていただければと思います。

治療法は?

欠乏したグルココルチコイドおよびミネラルコルチコイドの補充療法を行います。治療は生涯にわたって継続する必要がありますが、医原性副腎皮質機能低下症では一時的な補充のみ行う場合もあります。
急性腎不全によりショック状態の犬には緊急治療が必要であり、静脈内輸液による脱水や低循環、電解質異常、低血糖の補正を行います。ACTH刺激試験後にデキサメサゾンを投与し、一般状態が改善したのちに以下の維持療法に移行します。

<維持治療>

①フルドロコルチゾン(フロリネフ錠)
ミネラルコルチコイドとグルココルチコイド両者の作用をもつためアジソン病の治療に適しています。治療開始時には、グルココルチコイド作用を補うためにプレドニゾロンを併用し漸減していきます。


②ピバル酸デソキシコルチコステロン(DOCP、薬剤名:パーコテン)
ミネラルコルチコイドとしてピバル酸デソキシコルチコステロン(DOCP)が使用されます。DOCPは強いミネラルコルチコイド作用を持ちますが、グルココルチコイド作用はもたないためプレドニゾロンなどのグルココルチコイドと併用します。25日に1回、筋肉内または皮下投与します。


③プレドニゾロン
グルココルチコイドとしてプレドニゾロンが使用されます。ストレス時には用量を増加・調整する場合もあります。


このように、不足しているホルモンによって治療薬が異なります。
副腎皮質機能低下症(アジソン病)は、残念ながら完治が難しい病気であり、生涯にわたる投薬が必要になりますが、適切な治療を行えば、普通の子と同じ寿命を生きることが可能となります。
また、過剰なストレスはショック(副腎クリーゼ)を引き起こす可能性もありますので、環境の変化や過剰なストレスがかかりそうな場合は注意しましょう。

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
副腎皮質機能低下症(アジソン病)についてはこちらのリンクからそれぞれのページに飛べますのでご参考にしてください。
その他の記事
-
2024年の春の健康診断まとめ
今年も春の予防シーズンが落ち着き、夏本番が近づいてきていますね。今年は早い時期から猛暑が続いているので、熱中症には十分気をつけて下さい。 ここからは、今年度の4~6月…
1年前 -
副腎腫瘍について解説 | よくお水を飲む、尿が薄くて多いは病気の初期症状かも!? ~治療編~
こちらの記事では副腎腫瘍の症例での必要な治療について解説していきます。 副腎腫瘍の治療では大きく外科治療と内科治療に大きく分けられます。 それぞれの治療法を解説…
4週間前
-
犬の外傷性股関節脱臼
犬の起こりやすい外科疾患の中に股関節脱臼というものがあります。股関節脱臼は全ての外傷性脱臼の中でも最も発生が多く、全ての年齢に起こり、犬種や性差に関係なく発生します。主に…
1年前 -
角膜疾患(潰瘍性角膜炎)
角膜疾患とは、角膜、いわゆる黒目の部分に起こる疾患を指します。角膜疾患では「目を開けずらそう」「涙や目ヤニの量が多い」「まぶしそうにしている」という症状がよく見られます。 …
2年前 -
犬アトピー性皮膚炎|病態について
アトピー性皮膚炎とは、 「遺伝的素因を有した、痒みを伴うT細胞(炎症細胞の一種)を主体とした炎症性皮膚疾患」 と定義されています。 「遺伝的素因」を有して…
1年前 -
2025年 春の健康診断の結果をまとめました!
こんにちは!春のフィラリア検査・健康診断シーズンが終わり、すっかり真夏の暑さが到来しています。
今年もたくさんのわんちゃん・ねこちゃん達が健康診断のために来院してくれ…5か月前 -
副腎腫瘍について解説 | よくお水を飲む、尿が薄くて多いは病気の初期症状かも!? ~症状編~
こちらの記事では副腎腫瘍の症例で良く認められる症状について解説していきます。 副腎腫瘍の性質や種類によって出てくる症状は様々になります。 ぜひ最後までお読みいた…
2か月前 -
腹腔鏡補助下で実施した潜在精巣摘出術
潜在精巣とは片側または両側の精巣が陰嚢内に下降していない状態をいいます。ビーグルや雑種犬における精巣下行のタイミングは生後30~40日と言われており、2ヶ月齢の時点で精巣…
1年前 -
慢性腸症
慢性腸症の定義 『対症療法に抵抗性または再発性で3週間以上続く慢性の消化器症状を呈し、一般的な血液検査や画像検査で原因の特定には至らない、原因不明…
2年前 -
気管支鏡を実施した猫の症例
呼吸器疾患に対する検査にはX線検査やCT検査等の画像診断に加えて、血液検査(動脈血液ガス分析)や気管支鏡検査、肺生検(病理検査)などが挙げられます。消化管や肝臓などの他の…
3年前
