ご予約はこちら
045-932-5151
2022年9月4日

猫の尿管結石の症例

猫の尿管結石は比較的若齢でも発生する泌尿器系の疾患です。腎臓と膀胱をつなぐ尿管に結石が閉塞することで、腎臓で産生された尿が膀胱に流れず、腎臓に貯まってしまいます(水腎症)。この状態が続くと腎臓の正常な細胞が破壊されていき、腎機能が急激に悪化してしまうため緊急的な治療が必要になります。

治療法としては点滴や結石を溶解するサプリメント等の内科治療もありますが、反応が乏しいことが多く、その場合は外科的に対処する必要があります。

外科手術の方法としては、尿管切開術、尿管膀胱新吻合術、尿管ステントや皮下尿管バイパス装置(SUBシステム)の設置などが挙げられます。尿管切開術や尿管膀胱新吻合術は縫合部位の狭窄により再発が起こることが懸念されています。一方、尿管ステントやSUBシステムなどのインプラントは再発リスクが少ない代わりに感染を起こすリスクが高いとされています。

今回は尿管切開により結石を摘出し、良好な経過を得られた猫の症例をご紹介します。

症例 猫 5歳 去勢雄 スコティッシュ・フォールド 以前から腎臓・尿管内に結石があり、不完全閉塞を繰り返している。幸い、腎盂の拡張は軽度であったため、尿管内の結石に対して食事療法やサプリメント等の内科治療を試みるも完全閉塞を起こし、外科手術を実施した。

X線画像:黄色の丸内には腎結石が確認できる。赤い丸内には尿管結石が確認できる。

実際の手術の様子↑↑ 尿管内から1mmほどの結石を摘出、髪の毛ほどの細い糸で尿管を縫合した様子。

尿管結石摘出後は腎臓の数値も改善傾向になり、腎臓の結石が再閉塞する事なく良好な経過が得られている。

手術前後の腎臓の超音波検査画像:手術前は腎盂が拡張子水腎症を呈していた。術後は腎盂の拡張は改善している。
血液検査の推移:手術後は徐々に腎臓の数値は改善傾向にある。

今回は尿管切開により結石を摘出し、再閉塞する事なく良好な経過が得られた症例を紹介しました。SUBシステムなどのインプラントは再閉塞が少ない分、感染リスクが高いことに加えて、定期的なメンテナンスが必要になるなどのデメリットもあります。今回の症例では腎臓にも結石があるため、これらの結石が尿管内に移動して再閉塞を起こす可能性はありましたが、症例の年齢等も考慮してインプラントの設置はせず、尿管切開のみを実施しました。手術法にはそれぞれメリット・デメリットがあるため、結石の数や症例の状態に合わせて最適な手術方法を選ぶことが重要です。

また、尿管結石は片側の場合は非特異的な症状(なんとなく元気がない、いつもより動きがにぶい)しかみられない場合もあり、気付かないうちに腎臓の機能が低下していることもあります。何か異変を感じたら、早めに動物病院を受診して超音波検査などを実施してもらうと良いでしょう。

その他の記事

  • 整形外科

     整形疾患というと骨折が思い浮かぶと思いますが、その他にもワンちゃんネコちゃんで起こりやすい整形疾患があります。このページでは代表的な整形疾患に関してご紹介していきます。 …

    2年前
  • 尿管結石摘出術

      尿管結石は文字通り腎臓と膀胱をつなぐ『尿管』に結石が詰まってしまい、二次的に腎臓に損傷が生じる疾患です。片方の尿管に閉塞しただけでは主だった症状は認められませんが…

    2年前
  • べトスキャン イマジストが導入されました!

    この度、国内初のAI技術を応用した検査と専門医による診断サービスが可能な"べトスキャン イマジスト"という検査機器が当院に導入されました!     …

    1年前
  • 尾状葉乳頭突起の肝葉切除(肝細胞癌) 

    犬の肝臓の腫瘍性疾患において一番多く発生する腫瘍は肝細胞癌です。日常の臨床的にもよく遭遇する腫瘍で、発生の形態によって孤立性、多発性、び慢性に分けられます。経過としては徐々…

    1年前
  • 副腎腫瘍について解説 | よくお水を飲む、尿が薄くて多いは病気の初期症状かも!? ~治療編~

    こちらの記事では副腎腫瘍の症例での必要な治療について解説していきます。 副腎腫瘍の治療では大きく外科治療と内科治療に大きく分けられます。 それぞれの治療法を解説…

    3か月前
  • 当院での避妊手術について、詳しい手術方法を解説します

     皆さんが飼われているペットさんは避妊手術・去勢手術はされましたか?今回は当院での避妊手術について紹介したいと思います。  当院での避妊手術は「子宮卵巣摘出術」を採用…

    3年前
  • 犬と猫の予防接種の重要性について

    愛犬や愛猫の健康を守るために、予防接種はとても大切です。 予防接種は、犬や猫の健康を守るだけでなく人にも影響を及ぼす感染症を防ぐ重要な役割を果たします。 …

    11か月前
  • 猫の乳腺腫瘍

     猫の乳腺腫瘍は犬の乳腺腫瘍と比較して悪性度が高く、おおよそ80%が悪性の癌であると言われています。雌猫に発生する腫瘍のうち17%が乳腺腫瘍であり、比較的発生率の多い腫瘍で…

    1年前
  • 炎症性腸疾患<IBD>、慢性腸症

    炎症性腸疾患<inflammation Bowel disease:IBD>
    慢性腸症<chronic entropathy:CE> 小腸または大腸の粘膜固…

    6年前
  • フィラリア予防

    毎年春になるとフィラリア予防という言葉を耳にすると思います。なんとなくわんちゃんに害がありそうだから、健康診断のついでにやっておこうかな?本当にフィラリアの検査って必要なの…

    3年前