ご予約はこちら
045-932-5151
2024年4月30日

高カルシウム血症

普段血中のカルシウム濃度は厳密に調整されていますが、恒常性が破綻してしまうと高カルシウム血症が生じてしまいます。軽度の高カルシウム血症の場合は無症状のことが多く、偶発的に見つかることが多いですが、重度になると、食欲不振や嘔吐といった消化器症状、多飲多尿や尿路結石といった泌尿器系の異常、不整脈などの心筋の異常や神経症状といった様々な症状を示す場合があり、重度になる程危険なものとなります。

 

✔原発性上皮小体機能亢進症

✔悪性腫瘍随伴高カルシウム血症

✔アジソン病(副腎皮質機能低下症)

✔骨破壊

✔猫の特発性高カルシウム血症(原因が不明)

✔ビタミンD過剰症

  

治療

基本的には原因となる疾患の治療を行っていきます。ただし、すでに高カルシウム血症による症状が出ていたり、重度の高カルシウム血症になっている場合には早期の治療が必要な場合があります。

✔点滴治療

✔内科治療(利尿剤、ステロイドなど)

 

 

今回は高カルシウム血症を呈した症例を紹介します。

3歳の犬MIXの女の子、頻回の嘔吐、震え、多飲多尿の主訴で来院されました。HDでの血液検査にて高カルシウム血症が見つかり、本院での再検査においても高カルシウム血症(血清カルシウムおよびイオン化カルシウム)が認められました。

※左:他院結果 右:本院結果

 

超音波検査では、上皮小体の明らかな腫脹や副腎の萎縮などは認められず、膀胱結石がある程度で大きな異常は認められませんでした。

外注検査の結果、上皮小体ホルモン(PTH)や上皮小体ホルモン関連ペプチド(PTH-rp)は正常値、intactPTHが低値との結果でした。

これらの結果より、原因として下記の3つが鑑別として考えられました。

✔骨破壊

✔ビタミンD過剰症

✔アジソン病

そのため、ビタミンD過剰症を疑い、食事変更から開始しました。

現在、このわんちゃんは食事の変更によって症状は改善し、高カルシウム血症は認められなくなりました。膀胱結石はまだ改善されていないため、サプリメントによる内科治療を行っています。

 

過去には、農林水産省からビタミンD過剰の可能性のあるペットフードについての注意喚起が報告され、米国では特定のペットフード摂取によりビタミンD過剰症の症状(嘔吐、食欲減退、口渇、尿量増加、よだれの増加、体重減少など)を示すことや、腎不全または死亡につながる恐れのある濃度のビタミンDが検出されたペットフードもあるとされ、自主回収している事例もあります。

※記事はこちら

 

これからの季節熱さが増してくることで飲水量が増えてくることがありますが、異常に飲水量が増える場合は高カルシウム血症など、病気の可能性もありますので症状が出る場合はお気軽にご相談下さい。

 

※泌尿器科はこちら

その他の記事

  • 2024年の春の健康診断まとめ

    今年も春の予防シーズンが落ち着き、夏本番が近づいてきていますね。今年は早い時期から猛暑が続いているので、熱中症には十分気をつけて下さい。 ここからは、今年度の4~6月…

    1年前
  • 犬の口腔内無顆粒性悪性黒色腫

    犬の口腔内腫瘍には悪性黒色腫、扁平上皮癌、線維肉腫など様々な種類の腫瘍が発生することが報告されています。この中でも悪性黒色腫は口腔内腫瘍の中で最も発生率の高い腫瘍とされ、半…

    1年前
  • 食道バルーン拡張術にて治療した食道狭窄の猫の1例

    食道狭窄とは食道内腔が異常に狭くなることで嚥下障害が生じる病態のことを言います。 主な原因としては、薬物や化学物質による化学的な粘膜傷害、過度な嘔吐や胃酸の逆流(逆流…

    9か月前
  • 犬と猫の予防接種の重要性について

    愛犬や愛猫の健康を守るために、予防接種はとても大切です。 予防接種は、犬や猫の健康を守るだけでなく人にも影響を及ぼす感染症を防ぐ重要な役割を果たします。 …

    8か月前
  • 若い犬や猫に見られる皮膚糸状菌症(真菌感染症)とは

    皮膚糸状菌症とは、皮膚糸状菌と呼ばれる真菌(カビの仲間)による感染症であり、人にも感染するため人獣共通感染症とされています。猫ちゃんでは原因菌として20種ほどが報告されてい…

    5か月前
  • 新しい「がん」の血液検査:血中ヌクレオソームの測定

       獣医療の発展に伴いペットの長寿化は進んでいますが、その中でも死因の上位にあげられるのが悪性腫瘍、いわゆる「がん」です。特にワンちゃんの死因では「がん」が第1位に…

    1年前
  • 副腎皮質機能低下症(アジソン病)について解説 | 最近いつもより元気や食欲がないは病気のサインかも?

    最近、” 少し元気がない " や " 食欲がいつもよりない " などの症状が見られることはありませんか? 副腎の病気には機能が下がってしまう、副腎皮質機能低下症(アジ…

    1週間前
  • 狂犬病予防

    ”狂犬病予防接種”、皆さんは毎年きちんと接種されていますか?どうして毎年接種しないといけないの?接種の必要はあるの?と思う方もいるかもしれません。狂犬病は皆さんが思…

    2年前
  • ノミ・ダニ予防

    ノミやダニと聞くと、痒いというイメージを持たれる方が多いと思います。しかし、ノミやダニは痒みを引き起こすだけでなく、わんちゃんや猫ちゃん、さらには人にも様々な病気を引き起こ…

    2年前
  • 犬の脱毛|加齢によるもの?病気?

    わんちゃんも人と同じように、高齢になると毛の色が変化したり薄くなったりします。これは生理的なものですが、中には病的に脱毛が起こってしまうことがあります。 今回は病的な…

    7か月前