- ホーム
- 症例
- 神経科/眼科/整形外科
- 角膜疾患(潰瘍性角膜炎)
角膜疾患(潰瘍性角膜炎)
角膜疾患とは、角膜、いわゆる黒目の部分に起こる疾患を指します。角膜疾患では「目を開けずらそう」「涙や目ヤニの量が多い」「まぶしそうにしている」という症状がよく見られます。

角膜疾患は炎症性と非炎症性に分類されますが、動物さんで特に多いのが炎症性疾患の中の潰瘍性角膜炎です。今回はこの潰瘍性角膜炎(角膜潰瘍)について詳しくお話します。
【角膜の構造と潰瘍の分類】
角膜は、表面側から
◇角膜上皮…5~7層の細胞で構成。ターンオーバーは約1週間。
◇角膜実質…コラーゲンが主体。
◇デスメ層
◇角膜内皮…1層の細胞で構成。角膜内皮細胞の数は加齢等により減少するが、再生はしない。
と大きく分かれており、どの深さまで潰瘍が達しているかによってグレード分類がされています。


・グレード1「表層性」:角膜上皮の表層が微細に欠損
・グレード2「表層性」:角膜上皮層が欠損
・グレード3「深層性(実質性)」:角膜実質まで欠損
・グレード4「デスメ膜瘤」:デスメ層が露呈。眼圧によってデスメ膜が突出した状態をデスメ膜瘤と呼ぶ。
・グレード5「角膜突孔」:角膜内皮まで欠損
「トリミングの後に目が開かなくなった」「散歩で草むらに顔を突っ込んだ後から目をしばしばしている」といった主訴で来院され、グレードは1や2が多いです。
【潰瘍の原因】
潰瘍性角膜炎を起こす原因としては、
①角膜上皮の喪失が過度になっている
②角膜の保護・再生力が低下している
の2つがあり、それぞれの要因として、
①眼瞼内反、睫毛異常(特に異所性睫毛)、シャンプーやドライヤーの熱、物理的要因、アルカリ薬傷、
ステロイドなどの薬剤や点眼液中の防腐剤 など
②ドライアイ、兎眼(短頭種にしばしばみられる)、顔面神経麻痺、糖尿病等の全身性疾患 など
が挙げられます。
先述の通り、角膜上皮のターンオーバーは約1週間であり、つまり単純な角膜潰瘍であれば1週間で治ることを意味しています。
1週間以上治らない角膜潰瘍は、基礎疾患として他の病気が隠れていると考えられ、全身のスクリーニングが必要になることがあります。
【検査と治療】
潰瘍性角膜炎が疑われる場合、フルオレセイン染色を実施します。フルオレセインは黄色い蛍光色の染色液で、潰瘍部分を染めてくれるものです。

中央部分が潰瘍になっており、フルオレセインに染まっている。
フルオレセイン染色で潰瘍が確認されたら、治療開始です。
・抗生物質…二次感染予防
・ヒアルロン酸…角膜保護
潰瘍の深さにもよりますが、グレード1,2であれば上記の2つの点眼をしていただき、1週間後に完治していれば治療終了です。
【最後に】
目は、飼い主様と動物さんがコミュニケーションを取るための大切な器官です。
適切な治療を早期に行わないと視力を失ってしまうことにもなりかねません。少しでも変だと感じられたら、早めに病院に行かれることをお勧めします。
⇩こちらの記事もぜひご覧ください⇩
その他の記事
-
皮膚科
皮膚疾患はワンちゃんや猫ちゃんが予防以外で動物病院を受診する理由としてTOP3に入り、当院でも皮膚疾患で受診される方が多くいらっしゃいます。「痒がっている」、「皮膚が赤く…
3年前 -
最新の論文から考える〜犬の避妊手術、いつやるの?〜
はじめに 犬の避妊手術の適期は、犬種や性別によって大きく異なります。一般的なガイドラインを全ての犬に適用することはできず、個々の犬の健康状態や生活状況を考慮した個別化…
10か月前
-
猫の盲腸腺癌
猫の体重減少には様々な原因があります。甲状腺機能亢進症や慢性腎不全、糖尿病や腫瘍などが代表的な疾患です。特に、このような病気は急激に体調に変化をもたらすわけではなく、ゆっく…
4年前 -
泌尿器科
泌尿器とは泌尿器とは、腎臓、尿管、膀胱、尿道などからなる器官の総称で、血液をろ過して尿を作り、体内の水分や塩分のバランスを調整する働きをします。 高齢になると腎臓…
3年前 -
2024年の春の健康診断まとめ
今年も春の予防シーズンが落ち着き、夏本番が近づいてきていますね。今年は早い時期から猛暑が続いているので、熱中症には十分気をつけて下さい。 ここからは、今年度の4~6月…
2年前 -
猫の乳腺腫瘍
猫の乳腺腫瘍は犬の乳腺腫瘍と比較して悪性度が高く、おおよそ80%が悪性の癌であると言われています。雌猫に発生する腫瘍のうち17%が乳腺腫瘍であり、比較的発生率の多い腫瘍で…
2年前 -
犬の弁膜症:僧帽弁閉鎖不全症(MMVD)
犬の弁膜症:僧帽弁閉鎖不全症(MMVD) 僧帽弁閉鎖不全症(以下 MMVD)は犬の心臓病の代表的な疾患です。犬の心臓の構造は人と類似しており、2心房2心室で…
3年前 -
肝中央区域の腫瘍および胆嚢を一括切除した犬の一例
近年では、獣医療の発達とともに犬猫の長寿化が認められるようになり、腫瘍と診断される子も増えてきています。腫瘍の中でも肝臓腫瘍は稀であり、肝臓自体は”沈黙の臓器”とも呼ばれ…
4か月前 -
口腔内腫瘤に対して下顎部分切除を実施した犬の1症例
犬の口腔内腫瘍には悪性黒色腫、扁平上皮癌、線維肉腫など様々な種類の腫瘍が発生することが報告されています。この中でも、悪性黒色腫は悪性度の高い口腔内腫瘍の中で最も発生率の高…
3か月前 -
総合診療科
例えば、嘔吐や下痢が認められれば、何となく消化器が悪いのかな?と考えることができますし、咳をしていれば呼吸器かな?と予測することができます。しかし、「なんかいつもと様子が違…
3年前
