犬や猫だけでなく、ヒトにも感染する”SFTS”について
SFTS(重症熱性血小板減少症候群)とは、マダニを媒介してヒトや動物に感染するウイルス性の人獣共通感染症です。2013年に初めて国内患者の発生が認められ、西日本を中心に発生していました。しかし、2026年では神奈川県や茨城県など関東圏でも発生が認められるようになり、加えて報告されている患者数も増えているのが現状です。

今回はそんなSFTS(重症熱性血小板減少症候群)について解説していきます。

📌目次

重症熱性血小板減少症候群(SFTS)とは?
SFTS(重症熱性血小板減少症候群)とは、主にSFTSウイルスを保有しているマダニに咬まれることにより感染するマダニ媒介性の人獣共通感染症です。

2011年に中国で初めて報告され、日本では2013年に初めて感染が報告されています。日本国内では西日本中心に発生が報告されていますが、昨年から神奈川県や茨城県などの関東圏での発生も報告され、現在注目を集めている病気の一つになっています。

よく見られる症状について
体調不良として見過ごされやすい症状から始まることが少なくありません。
犬や猫でみられる主な症状には、以下のようなものがあります。
・高熱(発熱)
・元気消失、活動性の低下
・食欲不振
・嘔吐・下痢
・黄疸
・脱水
・リンパ節の腫れ
・白血球減少
・血小板減少
病状が進行すると、血液を固める働きが低下することで出血傾向がみられたり、肝臓や腎臓など複数の臓器に障害が起こることがあります。さらに重症例では、神経症状や意識障害、ショック状態に陥り、命に関わることもあります。
猫では重症化しやすく、致死率が高いことが報告されており、犬でも重症例がみられます。そのため、屋外へ出る犬や猫、マダニが付着していた犬や猫に発熱や食欲不振、嘔吐などの症状がみられた場合には、SFTSを鑑別診断の一つとして考える必要があります。
また、SFTSは人にも感染する可能性があるため、症状のある犬や猫を介抱する際は、血液や唾液などの体液に直接触れないよう、手袋やマスクなどを着用して感染対策を行うことが重要です。
SFTSは早期診断と適切な治療、そして周囲への感染予防が非常に重要な感染症です。マダニとの接触が疑われる犬や猫に気になる症状がみられた場合は、自己判断せず、できるだけ早く動物病院へご相談ください。

重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の原因について?
SFTS(Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome:重症熱性血小板減少症候群)は、SFTSウイルスによって引き起こされる人獣共通感染症です。日本では西日本を中心に発生が報告されていましたが、近年は報告地域が拡大しており、犬や猫でも感染例が確認されています。
主な感染経路は、SFTSウイルスを保有するマダニに咬まれることです。マダニは森林や草地だけでなく、公園や河川敷、住宅周辺の草むらなどにも生息しており、散歩や外遊び、屋外での生活を通じて犬や猫が咬まれることがあります。
マダニに咬まれたすべての犬や猫がSFTSを発症するわけではありませんが、ウイルスを保有したマダニに吸血されることで感染が成立します。感染した動物の中には症状を示さない場合もありますが、発症すると重症化することがあり、特に猫では致死率が高いことが知られています。
また、SFTSは動物から人へ感染する可能性がある感染症です。SFTSを発症した犬や猫の血液や唾液、眼脂、尿などの体液に直接触れることで感染したと考えられる事例が国内でも報告されています。そのため、体調不良の動物を診察・看護する獣医療従事者だけでなく、飼い主の方も注意が必要です。
なお、SFTSが犬や猫同士で日常的に感染を広げることを示す十分な証拠はありませんが、感染した動物の体液にはウイルスが存在する可能性があるため、発熱や元気消失などの症状がある場合には、素手で体液に触れないよう注意し、速やかに動物病院を受診することが大切です。

検査および診断について
SFTSについては身体検査や血液検査、遺伝子検査を用いて総合的に診断します。
検査
身体検査所見
・発熱
・元気食欲の低下
・黄疸
・消化器症状
・マダニ寄生など
血液検査所見
・白血球数減少
・血小板数減少
・ALT上昇
・CPK上昇
・T-Bil上昇
・SAA上昇(猫)
・CRP上昇(犬)など
診断法
SFTSの確定診断はウイルス学的診断法が用いられます。
SFTSウイルス遺伝子の検出
①RT-PCR検査(血液)
遺伝子を増幅させることによって検出します。最も感度・特異度が高い検査になります。

②口腔内や肛門スワブ

動物の体液や糞便中にSFTSウイルスが排出されることもあるため、滅菌綿棒を用いて採取した口腔内や肛門のスワブを材料としたウイルス遺伝子の検出も可能となります。しかし、血液中の遺伝子量と比較して少ないため、陰性だったとしても完全にSFTS感染は否定できません。
抗SFTSウイルス抗体の検出
ELISA法・蛍光抗体法
抗原抗体反応と酵素の働きを組み合わせて、特定のタンパク質、抗原、抗体を検出・定量する検査手法になります。

治療法について
感染拡大予防の点から、SFTS感染が疑われる場合は入院での治療が奨励されます。
現時点ではSFTSに有効な治療法はないので、対症療法と二次感染予防を行います。
〇皮下or静脈点滴…脱水の補正
〇吐き気止め、消化管運動改善薬…食欲に合わせて、消化管運動改善薬を使用することがあります。
○抗てんかん薬
○抗菌薬…二次感染予防
猫の場合、進行が速く発症から5日程度で亡くなるが多いです。回復する場合は、発症後1週間をピークに回復に向かいます。
一般状態が改善してもしばらくはウイルスの排泄が続くので、3-7日ごとに検査を行い、2回連続で陰転が確認できた場合に退院となります。
しかし、確実にウイルス排泄が0というわけではありませんので、自宅でも1週間は濃厚接触を控えましょう。同居の動物家族さんがいる場合も直接接触をさせないように注意しましょう。

重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の予後について
現在までに獣医療におけるSFTS治療に関する知見はほとんどありません。そのため、入院した犬や猫に対する治療は支持療法や対症療法(点滴や吐き気止めなど)が主体となります。ヒト医療では代表的な予後不良因子などが報告されてきています。対して、犬や猫ではSFTSにおける予後因子や明確な予後は明らかになっていません。

まとめ
ヒトでは2020年まで毎年60~100人程度の感染が認められていましたが、2021年以降は毎年100人を超える患者さんが報告されています。また、年を重ねるごとに報告される件数も増加しており、今年度も去年度を上回る速さで件数が増えている状況です。犬猫においても、報告されている範囲が拡大しており、件数も増えているのが現状です。
そのため、近年ではヒトにおいても犬猫においても非常に重要な感染症の一つとして重要視されています。しかし、きちんと感染対策を行っていれば、感染のリスクは減らすことも可能となります。ぜひご家族の犬猫ちゃんの感染対策のためにも、予防の徹底をすることをおすすめいたします。
他の予防記事について⇨こちら

Q&A
Q. ペット(犬・猫)にはどのように感染しますか?
A. 主にSFTSウイルスを保有しているマダニに咬まれることで感染します。また、近年ではマダニに咬まれた犬や猫などの体液(血液や唾液など)に触れたり、咬まれたりすることによる感染も報告されています。
Q. 感染するとどのような症状が出ますか?
A. 元気食欲の低下、発熱、嘔吐、黄疸などが症状が認められます。
Q. 動物から人にうつることはありますか?
A. あります。SFTSウイルスを保有した犬や猫の体液(血液、唾液、尿、便など)にはウイルスが含まれています。そのため、発症している動物の体液に直接触れた場合、SFTSウイルスに感染する可能性があります。
Q. どのような予防をすればよいでしょうか?
A. SFTSの予防には、ダニの駆虫が重要となります。マダニの駆虫をしていたとしても、咬まれてしまうと感染する恐れがあるため、なるべく草むらなどダニのいる環境には近づかないようにすることが大切になります。
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