犬アトピー性皮膚炎|治療の2本柱
今回は犬アトピー性皮膚炎の治療方法について詳しくお話していきます。
犬アトピー性皮膚炎の病態についてはこちらで解説しているので合わせてご覧ください。
======================
「犬アトピー性皮膚炎の治療の2本柱」
アトピー性皮膚炎は簡単に言うと「皮膚が弱い(広義)」状態です。
ですので、治療の基本としては皮膚の状態をできるだけ向上させることが第一で、それでも漏れてくる痒みに対して痒み止めを使用することになります。
1⃣皮膚バリアの強化
皮膚バリアの強化としては、①食事療法、②スキンケアがあります。
①食事療法 アレルギー食などの療法食。
②スキンケア ⑴外から・・・いわゆる保湿。入浴剤、ムース、スプレータイプなど様々あります。
⑵内から・・・サプリメント:乳酸菌、必須脂肪酸、ビタミン、亜鉛など。

2⃣痒み止め
①内服薬
⑴抗ヒスタミン・・・花粉症の薬と同じ成分。
利点:安価。少し眠くなる副作用があるがその他の大きな副作用はなし。即時性アレルギーや環境性アレルギーに効果あり。
欠点:効果は限定的で、劇的な改善は期待できないことがある。
⑵アポキル・・・免疫抑制剤。有効成分:オクラシチニブ 1日に2回~頓服
利点:即効性あり。抗搔痒作用◎
欠点:高価(1日数百円~)。 長期的な使用で、腎数値の悪化、感染↑、腫瘍↑(3年間の研究では有意差なし)などの副作用あり。

⑶ステロイド・・・免疫抑制剤。 1日に1回~数日おきに1回
利点:安価。即効性あり。抗搔痒作用◎
欠点:長期的な使用で、肝/腎数値の悪化、心臓病悪化、皮膚炎の悪化、内分泌疾患リスク上昇、糖尿病リスク上昇など様々なリスクが高くなる。
⑷シクロスポリン・・・免疫抑制剤。 1日1回~数日おきに1回
利点:脂漏症の子で効果◎ 血中濃度が維持できていれば2-3日に1回に減らせる
欠点:高価。即効性がなく、血中濃度が上がって効果が出るまでに数週間かかる。
②注射薬 サイトポイント・・・1か月に1回の皮下注射。高価(1回¥10.000~)だが、上記の免疫抑制剤よりは副作用が少ない。

③外用薬 免疫抑制薬・・・ステロイド等

基本的には1⃣皮膚バリアの強化が治療のメインですが、皮膚のターンオーバーの関係上、治療を始めて約1か月くらい経ってようやく効果が表れるので、それまではどうしても薬物療法が必要になります。
======================
このように、アトピー性皮膚炎の治療は皮膚の状態と痒みに合わせてオーダーメイドで治療をしていきます。
「どんな痒み止めを使っても痒みが良くならない」「今使っている薬をできるだけ減らしたい」などがありましたらお気軽にお問い合わせください。
⇩こちらも是非ご覧ください⇩
その他の記事
-
犬の椎間板ヘルニア
椎間板ヘルニアは、犬において最も遭遇する頻度の高い神経疾患の一つです。椎間板は椎骨間(背骨と背骨の間)の緩衝材として存在しています。この椎間板が変性し、脊髄を圧迫すること…
2年前 -
犬アトピー性皮膚炎|病態について
アトピー性皮膚炎とは、 「遺伝的素因を有した、痒みを伴うT細胞(炎症細胞の一種)を主体とした炎症性皮膚疾患」 と定義されています。 「遺伝的素因」を有して…
11か月前
-
「目が見えていないかも…」考えられる原因とは?
犬は人よりも年を取るスピードが速く、7歳を超えるとシニア期に入ります。 年を取れば取るほど病気も増えていきますが、目もその一つです。 「最近物によくぶつかるよう…
1年前 -
高カルシウム血症
普段血中のカルシウム濃度は厳密に調整されていますが、恒常性が破綻してしまうと高カルシウム血症が生じてしまいます。軽度の高カルシウム血症の場合は無症状のことが多く、偶発的に見…
1年前 -
紐状異物
紐状異物は危険な異物の一つで、特に猫に多く見られます。 消化管は食べ物を消化・吸収するために蠕動運動をしています。紐によって手繰り寄せられた消化管は、蠕動運動によって…
2年前 -
両側に胸腔ドレーンを設置し救命した膿胸の猫
救急診療時間内にきた膿胸の猫の一例を紹介いたします。 症例 雑種猫 1歳 避妊メス 数日前から元気がなく今日になって呼吸が苦しそうとのことで来院されました。…
1年前 -
腹腔鏡下肝生検
ワンちゃんやネコちゃんでも健康診断で肝臓の数値が高い子を多くみかけます。一般的には症状がなく、元気そうにみえる子がほとんどですが、重病が隠れていることもあります。 …
1年前 -
肝生検
健康診断で『肝臓の数値が高いですね』と言われたことや過去に『黄疸があり大変厳しい病気です』と動物病院で診断されたことはありませんか? 猫ちゃんの肝臓の病気は栄養性、感…
5年前 -
肥満細胞腫
肥満細胞腫は、犬の皮膚腫瘍のうち20%前後を占めるため、犬の腫瘍では遭遇することの多い疾患にあたります。主にしこりの付近のリンパ節、続いて肝臓、脾臓へ転移することも多いため…
3年前 -
低侵襲手術(内視鏡を用いた膀胱結石の摘出)
膀胱結石は犬、猫ともに発生頻度の多い泌尿器疾患です。体質により再発を繰り返すことが多いですが、手術時に細かな結石を取り残してしまうことによって術後早期に膀胱内に結石が確認…
2年前