犬の甲状腺機能低下症について | 元気がないや皮膚症状は甲状腺機能低下症の初期症状かも? ~検査および診断編~
こちらの記事では甲状腺機能低下症における検査および診断について解説していきます。
甲状腺機能低下症では、様々な検査が検査が併用される場合があります。
甲状腺機能低下症の可能性がある飼い主様はぜひ最後までお読みください。

必要な検査および診断は?
犬の甲状腺機能低下症の診断では一つの検査だけで診断を下すのが困難なため、血液検査や超音波画像検査など様々な検査が併用されます。

【血液検査】
簡易的な血液検査では異常値が認められることは少なく、長期間放置されたような症例では異常値として認められることがあります。しかし、これらの所見は極めて特異的なため、成犬の甲状腺機能低下症の診断にはあまり役立ちません。そのため、ホルモン検査が併用されることが多くなります。

◎CBC、血液化学検査
軽度の非再生性貧血や高脂血症(甲状腺機能低下症の70%程度)がみられることがありますが、これらの所見は非特異的であり、確定診断にはなりません。

◎ 内分泌検査
臨床兆候から甲状腺機能低下症が疑われる場合、T4、fT4、イヌ甲状腺刺激ホルモン(cTSH)を測定します。しかし、これらは甲状腺以外の病気や投薬等によって血中の甲状腺ホルモンが低下する減少(ユーサイロイドシック症候群:ESS)の影響を受けやすいので、内分泌検査を行う時にはESSを除外しておく必要があります。

① T4
甲状腺機能低下症では低値になりますが、ESSの影響を受けやすく、これだけで確定診断することはできません。

② fT4
T4よりESSの影響を受けにくく、信頼性が高いです。低値ならば甲状腺機能低下症の可能性があります。

③ TSH
甲状腺機能低下症の多くで高値になります。ただし、慢性的に無治療だった場合は低値を示すことがあり、甲状腺機能低下症を除外することはできません。

※T4低値、fT4低値、TSH高値 ➡ 甲状腺機能低下症が疑われます

【画像検査】
血液検査のみでは甲状腺機能低下症とESSを鑑別することは難しく、画像検査を併用することで診断が可能となる場合があります。

◎ 超音波検査
甲状腺が萎縮している場合(短径3.0mm未満)は甲状腺機能低下症が考えられます。ただし、重度に萎縮した場合はエコーで検出するのが難しい場合があります。


◎ 頸部CT検査
甲状腺機能低下症とESSを鑑別するうえで有用な検査方法です。健康犬の甲状腺は周囲組織よりCT値は高いです(白くなる)が、甲状腺機能低下症では甲状腺は委縮し周囲組織と同じCT値になります。ただし、検査には鎮静や麻酔が必要になる場合があります。

ホルモン検査だけでも仮診断が可能な場合もありますが、画像検査にて萎縮した甲状腺が確認できれば、甲状腺機能低下症の可能性がより高まります。
似たような症状としてESS(ユーサイロイドシック症候群)がありますが、甲状腺機能低下症の診断ではこの疾患を必ず除外することが重要となります。
そのため、甲状腺機能低下症の診断には様々な検査を併用して行う必要があるのです。
もしかして?と思った場合にはお気軽にお問い合わせください。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
こちらのリンクよりそれぞれのページに移行できますので、ぜひご参考にして下さい。
▼ 治療法について
その他の記事
-
ワクチンによるアナフィラキシーショック
毎年たくさんのワンちゃんネコちゃんが予防接種のために来院しています。 病原体の病原性を弱めたり無毒化したものをワクチンとして接種することで、 恐ろしい感染症に対…
1年前 -
犬の甲状腺機能低下症について | 元気がないや皮膚症状は甲状腺機能低下症の初期症状かも?
" 最近元気がない " や " 皮膚症状が出てくるようになった " といった症状が見られることはありませんか?もしかしたら、甲状腺機能低下症の初期症状かもしれません。 …
1か月前
-
犬の股関節脱臼の外科的整復(大腿骨頭切除)
犬の起こりやすい外科疾患の中に股関節脱臼というものがあります。股関節脱臼は全ての外傷性脱臼の中でも最も発生が多く、全ての年齢に起こり、犬種や性差に関係なく発生します。主…
12か月前 -
副腎皮質機能低下症(アジソン病)について解説 | 最近いつもより元気や食欲がないは病気のサインかも?~症状編~
こちらの記事では副腎皮質機能低下症の症例で認められる症状について解説していきます。 副腎皮質機能低下症では欠乏するホルモンによって見られる症状が異なります。 …
2か月前 -
肋間開胸術による犬の肺腫瘍切除
今回は他院にてレントゲン撮影をした際に肺腫瘍が見つかり、セカンドオピニオンとして当院を受診し、CT検査及び肺葉切除によって腫瘍を摘出した一例を紹介します。 a …
1年前 -
アレルギー食|たくさんありすぎてどれを選んでいいか分からない?種類と使い分けについて
ペットショップや薬局のペットフードコーナーで「アレルギー体質の子向け」と書かれたフードを見かけたり、獣医さんから「アレルギーかも」と言われたことはありますか? アレル…
7か月前 -
狂犬病予防
”狂犬病予防接種”、皆さんは毎年きちんと接種されていますか?どうして毎年接種しないといけないの?接種の必要はあるの?と思う方もいるかもしれません。狂犬病は皆さんが思…
3年前 -
べトスキャン イマジストが導入されました!
この度、国内初のAI技術を応用した検査と専門医による診断サービスが可能な"べトスキャン イマジスト"という検査機器が当院に導入されました! …
1年前 -
糖尿病性ケトアシドーシス
糖尿病性ケトアシドーシスとは内科エマージェンシーの1つであり、糖尿病が進行して発症します。発症メカニズムとしては、インスリン不足によりブドウ糖の細胞内への取り込みが減り、代…
6年前 -
腎瘻チューブの設置により尿管が疎通した腎盂腎炎の症例
腎孟腎炎は腎孟および腎実質の炎症で,原因としてもっともよくみられるのは細菌感染です。 今回は腎盂腎炎に伴い尿管閉塞を起こした猫に対して、経皮的に腎瘻チューブを設置し、…
3年前
