ご予約はこちら
045-932-5151
2025年7月8日

犬の尿石症について ~症状や治療法について説明します~ 


尿石症とは?

尿石症とは、腎臓や尿管、膀胱、尿道などの尿路のいずれかの部位に結石ができる病気です。結石が存在する部位によって、腎結石、膀胱結石、尿管結石、尿道結石などと呼ばれます。尿路の炎症・頻尿・乏尿・閉塞などの徴候を引き起こす疾患です。さらに、そのまま放置すると、腎不全などの重篤な疾患につながる危険性があります。結石の大きさ、種類、臨床症状の有無などの条件で治療法が異なります。


結石の種類

結石には、ストルバイト結石、シュウ酸カルシウム結石、尿酸塩結石、シスチン結石などの種類があります。中でも下図のストルバイト結石シュウ酸カルシウム結石が比較的多く認められます。

↑ストルバイト結石


↑シュウ酸カルシウム結石



尿石症の原因

尿石症は、細菌感染、基礎疾患や併発疾患の存在、遺伝的素因、薬剤の影響、ストレス、食事などさまざまな原因で発症します。


・細菌性膀胱炎などの尿路感染症

犬の尿石症は膀胱炎などの感染に伴って生じることが多いです。特に、犬の尿路結石の多くを占めるストルバイト結石の生成には細菌が関与しているといわれています。


・基礎疾患や併発疾患

門脈体循環シャント、高カルシウム血症、尿路感染などにより結石生成が促進されます。


・遺伝的素因

尿酸塩結石やシスチン結石は特に好発犬種が知られています。


・食事

ミネラルを豊富に含む食事やおやつの過度な摂食は結石の生成を促進する可能性があります。


尿石症の症状

血尿、頻尿、排尿時に痛がる、陰部を舐めるなどの症状がみられます。また、結石が尿路に詰まると尿が排泄できなくなり、尿毒症や腎機能障害によって重篤な状態になる危険性もあります。

特徴

オスは尿道が狭くて長く、陰茎には陰茎骨という骨があり結石がつまる可能性があります。一方で、メスは尿道が太く短いため結石は詰まりにくいですが、尿路感染症にかかりやすいと言われています。


検査

・身体検査

・尿検査

・レントゲン検査

・超音波検査

↑膀胱結石の症例(超音波検査)


治療

尿石症の治療は大きく分けて食事療法、薬物療法、外科手術です。

・食事療法

尿石症用の療法食は結石を予防するために、マグネシウムを制限をしたり尿のpHを整える工夫が施されています。



・薬物療法

サプリメントの服用や、細菌感染による尿石症の場合は抗生剤を投与します。


・外科手術

内科的治療に反応が乏しいときは、外科手術で結石を取り除く場合があります。

尿管結石摘出術について:https://sho-ac.jp/wp-admin/post.php?post=1509&action=edit


尿石症を予防するために日ごろからできることは?

犬の尿石症を予防するには、生活習慣や食事、飲水量などに気を付けることが大切です。


・適度な運動と食事

栄養バランスの整った食事を与えましょう。肥満は尿石症を引き起こす原因の一つになります。日頃から適度な運動と食事管理を心がけましょう。


・飲水量を増やす

ウェットフードを取り入れたり水飲み場の数を増やしたり自動給水機などの利用もおすすめです。トイレは常に清潔にしましょう。



まとめ

愛犬にいつもと変わった様子はありませんか?

尿石症には、生活習慣や食生活なども深くかかわっており、日頃の予防が重要です。特に飲水量や排尿回数、尿の色などの変化も気を付けて観察しましょう。

定期的に健康診断を受けることや、気になる症状があればすぐに受診することをおすすめします。

その他の記事

  • 犬の弁膜症:僧帽弁閉鎖不全症(MMVD)

    犬の弁膜症:僧帽弁閉鎖不全症(MMVD)   僧帽弁閉鎖不全症(以下 MMVD)は犬の心臓病の代表的な疾患です。犬の心臓の構造は人と類似しており、2心房2心室で…

    2年前
  • 尿管結石摘出術

      尿管結石は文字通り腎臓と膀胱をつなぐ『尿管』に結石が詰まってしまい、二次的に腎臓に損傷が生じる疾患です。片方の尿管に閉塞しただけでは主だった症状は認められませんが…

    2年前
  • 紐状異物

    紐状異物は危険な異物の一つで、特に猫に多く見られます。 消化管は食べ物を消化・吸収するために蠕動運動をしています。紐によって手繰り寄せられた消化管は、蠕動運動によって…

    2年前
  • 2025年 春の健康診断の結果をまとめました!

    こんにちは!春のフィラリア検査・健康診断シーズンが終わり、すっかり真夏の暑さが到来しています。
    今年もたくさんのわんちゃん・ねこちゃん達が健康診断のために来院してくれ…

    5日前
  • 犬の股関節脱臼の外科的整復(大腿骨頭切除)

    犬の起こりやすい外科疾患の中に股関節脱臼というものがあります。股関節脱臼は全ての外傷性脱臼の中でも最も発生が多く、全ての年齢に起こり、犬種や性差に関係なく発生します。主…

    6か月前
  • 犬の瞬膜腺脱出(チェリーアイ)

    瞬膜腺とは内眼角側にあるT字型の軟骨を支えに存在しています。この瞬膜は眼球の物理的な保護、眼脂の除去、涙を眼球に広げてくれるなどの働きがあります。この瞬膜の裏側に存在するの…

    1か月前
  • 低侵襲手術(内視鏡を用いた膀胱結石の摘出)

     膀胱結石は犬、猫ともに発生頻度の多い泌尿器疾患です。体質により再発を繰り返すことが多いですが、手術時に細かな結石を取り残してしまうことによって術後早期に膀胱内に結石が確認…

    2年前
  • 皮膚科

     皮膚疾患はワンちゃんや猫ちゃんが予防以外で動物病院を受診する理由としてTOP3に入り、当院でも皮膚疾患で受診される方が多くいらっしゃいます。「痒がっている」、「皮膚が赤く…

    2年前
  • 泌尿器科

     泌尿器とは泌尿器とは、腎臓、尿管、膀胱、尿道などからなる器官の総称で、血液をろ過して尿を作り、体内の水分や塩分のバランスを調整する働きをします。  高齢になると腎臓…

    2年前
  • アレルギー食|たくさんありすぎてどれを選んでいいか分からない?種類と使い分けについて

    ペットショップや薬局のペットフードコーナーで「アレルギー体質の子向け」と書かれたフードを見かけたり、獣医さんから「アレルギーかも」と言われたことはありますか? アレル…

    1週間前