肝生検
健康診断で『肝臓の数値が高いですね』と言われたことや過去に『黄疸があり大変厳しい病気です』と動物病院で診断されたことはありませんか?
猫ちゃんの肝臓の病気は栄養性、感染症、炎症性、腫瘍性など様々な原因で発生します。比較的重症なものが多く、場合によっては亡くなってしまうこともあります。今回は健康診断で肝臓の数値が高く、徐々にその肝酵素の数値が上昇し進行してきたため重症化する前に診断、治療を行った症例をご紹介します。
雑種 5歳 未去勢雄
健康診断で肝臓の数値の上昇が認められました。一般状態は良好で見た目は全く問題ありませんでした。血液検査や腹部超音波検査に加え、甲状腺ホルモンの測定などを行いましたが大きな異常はなく経過観察としました。その後徐々に肝酵素が上昇し、次第に食べムラが認められたため開腹下にて肝生検を実施しました。

<肝生検とは>
肝臓の一部を切り取り病理検査に供します。開腹で行う検査ですので抵抗もある飼い主様も多いと思います。しかし得られる情報はとても多く、適切な時期に行えばその後の治療方針を大きく左右する検査になります。
結果は『リンパ球性胆管肝炎』
この病気は肝臓の中ので炎症が広がっていく病気です。治療には適切なステロイドを必要としますが、状態によっては反応せず様々な合併症を起こし死に至る怖い病気です。
認められる症状は食欲不振、嘔吐、下痢、など一般的なものが多く、数日前から食欲がない、元気がないといった主訴で来院されることが多いです。黄疸が認められることが多い病気でおしっこが濃くなったと来院されることも少なくありません。
今回は検診にていち早く異常を見つけられたことが幸いし、早い段階で診断できたおかげで適切な治療を行うことができました。重症化する前に病気を鎮静化できたおかげで今も元気に過ごしてくれております。
その他の記事
-
呼吸器科
『当院では、様々な呼吸器疾患に対し質の高い診断や治療が可能にするために血液検査機器、血液ガス検査機器、胸部レントゲン検査、気管支鏡検査、ICU(集中治療室)、およ…
2年前 -
炎症性腸疾患<IBD>、慢性腸症
炎症性腸疾患<inflammation Bowel disease:IBD>
慢性腸症<chronic entropathy:CE> 小腸または大腸の粘膜固…5年前
-
慢性腸症
慢性腸症の定義 『対症療法に抵抗性または再発性で3週間以上続く慢性の消化器症状を呈し、一般的な血液検査や画像検査で原因の特定には至らない、原因不明…
1年前 -
2022年の健康診断のまとめ
季節が過ぎるのは早いもので、あっという間に新年度を迎えました。 今年もワンちゃんのフィラリアの検査・予防が始まる時期になりました。 当院ではフィラリアの予防を始…
2年前 -
尾状葉乳頭突起の肝葉切除(肝細胞癌)
犬の肝臓の腫瘍性疾患において一番多く発生する腫瘍は肝細胞癌です。日常の臨床的にもよく遭遇する腫瘍で、発生の形態によって孤立性、多発性、び慢性に分けられます。経過としては徐々…
7か月前 -
短頭種気道症候群
短頭種気道症候群とは多くが先天性で、パグやフレンチブルドッグなど短頭種に生じる疾患の総称です。外鼻腔狭窄、軟口蓋過長症、気管低形成を先天的に生じ、持続的な気道抵抗の増加によ…
1年前 -
先天性門脈体循環シャント
先天性門脈体循環シャントは生まれつき血管に異常のある病気です。なんとなく元気がなかったり、成長が悪かったりと特異的な臨床徴候を出さないこともあり、血液検査をしないとわから…
1年前 -
猫の盲腸腺癌
猫の体重減少には様々な原因があります。甲状腺機能亢進症や慢性腎不全、糖尿病や腫瘍などが代表的な疾患です。特に、このような病気は急激に体調に変化をもたらすわけではなく、ゆっく…
2年前 -
内視鏡 異物除去
内視鏡症例をご紹介いたします。 果物の種を飲み込んでしまったワンちゃんで内視鏡によって摘出を行いました。 異物、誤食の中で桃の種など果物の種は高確率に腸…
5年前 -
呼吸器科
『当院では、様々な呼吸器疾患に対し質の高い診断や治療が可能にするために血液検査機器、血液ガス検査機器、胸部レントゲン検査、気管支鏡検査、ICU(集中治療室)、およ…
2年前